バラムツ試食授業、何が悪かったのか
名古屋市内にある専門学校の非常勤講師が、授業で有害な深海魚「バラムツ」を生徒に食べさせたとして問題視する報道がありました。学校側も「行き過ぎがあった」と非を認め、法令遵守を徹底することを表明しました。しかし、外部からは安全に配慮した上で学生の同意を得て少量を口にさせただけで、専門的な体験としては有意義だったと擁護する意見も。果たしてこの授業の是非はどちらなのでしょうか。
専門的な体験授業の一環、同意の上で試食
問題の授業については9月21日、朝日新聞が「有害深海魚、学生50人に食べさせる」(デジタル版では「『下痢の恐れ』バラムツ、専門学校で試食 説明し任意で」)などの見出しで報じました。記事によれば、授業は7月2日、名古屋市中区の名古屋コミュニケーションアート専門学校エコ・コミュニケーション科で、海洋環境などを教える30代の男性非常勤講師が担当。学生約60人に深海魚について教える際、煮沸した親指の先ほどの大きさの切り身を60個用意。事前に下痢になる恐れなどを説明した上で、希望した約50人の生徒に食べさせました。 同校は8月下旬までに、バラムツを食べた学生の健康状態を調べ、中毒症状の訴えはなかったと確認。しかし、名古屋市食品衛生課から「有害な魚で、本来は排除されるべきもの。勧めて食べさせたのは問題だ」と指摘され、「体験教材として食べさせたのは行き過ぎで、今後は避けるよう指導監督していく」などと、再発防止を図る考えを伝えました。 他の新聞やテレビも同様に報じて反響が広がる中、学校側はホームページに鶏徳尚雄校長名で説明文を掲載。記事を補足する形で、授業の意図などを伝えました。それによれば、記事で取り上げられた講師は三重大学の大学院博士課程に学び、三重県の財団法人「海の博物館」の特任調査員などを務めた海洋生物の専門家。今回の授業について「深海魚の特殊な浮力調整の方法や、魚類の毒性を解説する際の一教材としてバラムツを取り上げ、食品衛生法についても解説しました」とした上で、次のように釈明しています。 「バラムツについては、一般的な魚類と異なる浮力調整機能を、その脂によって行っています。同時にこの脂はワックスエステルという人体で消化できないという特徴を持っており、今回の教材として適していると考えた次第です。『味覚』によってその中毒性を感知できないことを体感してもらうことも、ひとつの目的としました。同時に体験を通して生物に興味を持ち、学ぶことの重要性を日ごろから考えていました。今回、偶然そのバラムツが手に入ったことから、十分に安全性に留意したうえで、将来、魚や動物のプロの飼育員になるためには、ひとつの体験として試食してみることも必要だと考えました」 緊急に開かれた保護者会では「十分に説明がなされていたように聞いていた」「経験としてはよかったのではないか」などの意見があったそうです。ただし今回、結果的にマスコミに漏れて問題となったことから、一部の生徒や親は不満、不信を抱いていた可能性もあります。