夫婦別姓間の子供の名字は家庭裁判所が決める 新たな家族不和の火種「いっそくじ引きで」 ごまかしの選択的夫婦別姓議論
この間も、公的資格などを含む旧姓使用の拡大は進み、日常生活の煩わしさは改善されつつあるが、最近の訴訟では、より一層「改姓の喪失感」「精神的な負担」が強調されるようになった。
昨年3月に提起された訴状では、現行法の婚姻は、いずれかの姓を変えるか、諦めるかの「過酷な二者択一」を迫っていると指摘。「家族の在り方や国民意識の多様化」が進み、別姓を認めないことの合理性はないと主張している。
もちろん個人のアイデンティティーは大切だが、子供にしてみれば「強制的親子別姓」となり、共通のファミリーネームがなくなれば家族としての同一性は失われることになる。
家族法に詳しい長崎大学の池谷和子准教授は「夫婦間だけではすまない話だ。嫁姑の確執もひどくなるだろう」と危惧する。孫の名字をめぐって双方の祖父母が争いになる可能性もある。
また、同一世帯に2つの姓が混在する状況は、戸籍への影響も懸念される。国士舘大学の百地章名誉教授は「戸籍は『家族の一体性』と『家名・家系の一系性』を表す。わが国が長年維持してきた戸籍制度の解体につながる」と警鐘を鳴らす。
先の内閣府の世論調査には、「婚姻で相手の名字に変わった場合、どのような感じを持つと思うか」(複数回答)との問いもある。
最も多かったのが「新たな人生が始まるような喜びを感じる」(54・1%)、次が「相手と一体になったような喜びを感じる」(39・7%)だった。