海外の先進的な企業によるLGBTQ+支援の取り組み3選
具体的な取り組み
それでは、実際にLGBTQ+インクルージョンのためにどんな取り組みが考えられるのでしょうか。企業が導入できる取り組みの大枠には以下のようなものがあります。 ポリシーとガイドラインの制定:LGBTQ+の権利と平等を保障するポリシーを明文化し、社内外に明示する。 教育とトレーニング:従業員全体に対するLGBTQ+に関する教育プログラムを実施し、意識の向上を図る。 パートナーシップ制度の導入:同性パートナーにも配偶者と同等の福利厚生を提供する。 社内ネットワークの支援:LGBTQ+の従業員ネットワークを支援し、コミュニティ形成と相互支援を促進する。 採用と昇進の透明性確保:採用・昇進プロセスにおいてLGBTQ+の人々が平等に扱われるよう、透明性と公平性を確保する。
先進的な企業の取り組み事例3選
さて、海外の先進的な企業は、具体的にどんな取り組みをしているのでしょうか。3つの企業の事例をご紹介いたします。 Barclays(イギリス):20年以上続くLGBTQ+ネットワーク イギリス・ロンドンに本拠を置く国際金融グループBarclaysは、LGBTQ+コミュニティに対する支援で有名な企業の一つです。同社は、従業員のジェンダーアイデンティティや性的指向に関わらず、平等な機会を提供するための厳格なポリシーの設定や性転換手術の補助、プライドイベントのスポンサーとしての活動などを行っています。また、20年以上前に設立された「Spectrum」は、LGBTQ+の社員の個性を尊重し支援する職場環境を作り出すと共に、LGBTQ+コミュニティを取り巻く課題への意識向上を目的として活動しているネットワークです。外部講師を招いての聴講会、LGBTQ+関連イベントへの協賛、LGBTQ+の学生に向けた就職活動支援などを通じ、従業員一人一人の性的指向が尊重される受容的な職場環境の確立を目指しています。東京における他の金融機関等のLGBTQ+ネットワークとも活発に交流しており、「LGBT Finance」と称して共同で東京レインボープライドに参加するなどしています。 IKEA(スウェーデン):元祖インクルーシブな広告 「より快適な毎日を、より多くの方々に」をビジョンとするスウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニーIKEAは、LGBTQ+インクルージョンに関して積極的な取り組みを行っています。同社はグローバルのLGBTQ+インクルージョンプランを採択し、トランス・インクルーシブな職場を構築するためのガイドラインを発表しています。さらに、LGBTQ+の社員には包括的な福利厚生を提供しており、IKEAアメリカでは性別適合カウンセリングと手術の一部をカバーしています。従業員向けには、LGBTQ+の包括性に関するトレーニングも行い、無意識の偏見に気付き、性的指向や性自認に関する偏見を減らすために学びの機会を提供しています。また、消費者向けにもインクルーシブな広告で知られており、1994年に公開された男性カップルがダイニングテーブルを探しているIKEAのテレビCMは、LGBTQ+を取り上げた初期の広告として知られています。さらに、毎年5月17日にはIDAHOBIT(国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日)を祝い、グローバルでキャンペーンを展開しています。 ブルームバーグ(米国):インターセクシュナリティに光を当てる 経済、金融情報の配信、通信社、放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社ブルームバーグは、 D&Iのポリシーで明確にインターセクシュナリティ(https://www.bloomberg.co.jp/company/stories/diversity-inclusion-business-accountability-intersectionality/)に言及しているところが特徴的です。インターセクショナリティ(交差性)は、複数のアイデンティティが組み合わさることで特有の不平等、差別、抑圧または特権が生じることへの気づきを促すものです。例えば、性的マイノリティの方は、同時に人種、障がい、年齢、家庭状況、学歴や生育環境など他の面でもマイノリティを持ち合わせているかもしれません。あらゆる不平等について考えるとき、こういったことを考慮し、包括的なアプローチをとることがとても重要です。また、ブルームバーグは優秀な人材を獲得するためのテクノロジーに投資し、適切なシステムやプロセスを導入しながらインクルーシブな採用慣行を推進しています。インクルーシブな採用を促す団体やキャリアフェアなどと協力して、LGBTQ+の人材ネットワークを広げながら人材採用のパイプラインを構築しています。
終わりに
プライドマンスは、LGBTQ+コミュニティの権利と平等を祝う重要な期間であり、企業がインクルージョンを推進するために議論を生む絶好の機会でもあります。グローバル化していく世界のなかで先進的な企業の取り組みから学び、日本企業も積極的にLGBTQ+インクルージョンを進めていくことが求められています。誰もが安心して働ける職場環境を整え、イノベーションや生産性をあげていくことで、持続可能なビジネス慣行を実現させましょう。