「N-BOXジョイ」にできて「N-BOX」にはできないこと あるいはその反対
インテリアは「ふらっとテラス」
スーパーハードな出張取材から戻ってパソコンを起動すると、webCGからメールが届いていた。件名は「コラムを書いてください」。本文にはテーマとして《「N-BOXジョイ」にできて「N-BOX」にはできないこと あるいはその反対》と書いてあった。常軌を逸したむちゃぶりである。立場の弱い出入り業者に対するイジメ行為としか思えない。内外装が違うだけで、この2台は同じクルマである。チーフエンジニアの諫山博之さんは、「N-BOXジョイの強みはN-BOXと同じ使い勝手と利便性があること」と話していたのだ。 【写真】特徴はチェックの内装のみならず! N-BOXジョイをもっと詳しく見る(72枚) 新モデル発売時には試乗会が開かれるのが普通だが、N-BOXジョイは事前説明/撮影会だった。パワートレインや足まわりなどに変更はないので、走らせてみても意味がない。代わりに設定されていたのが「ふらっとテラス体験」というプログラム。リアシートを折りたたんで広いスペースを出現させ、ゆったりとした姿勢で過ごすことができることをアピールしていた。一応、これが「N-BOXジョイにできてN-BOXにはできないこと」ということになるのだろう。 標準車より約15万円高いのに違いはそれだけかよ、という声が聞こえてきそうだが、実は目的に合わせてしっかりとつくり込んでいる。倒したリアシートの上に座るかたちになるので、フレームの凹凸がお尻に当たらないようにプレートを入れてフラットな形状にした。さらに、フロア後端を80mm上げることで体がずり落ちることを防いでいる。 ふらっとテラスで何ができるか。ホンダが推奨しているのはチェアリングだ。広場や公園に椅子を持っていき、ランチを食べたりお茶を飲んだりながら気ままに過ごすというアクティビティーである。コロナ禍で飲食店への出入りが制限された時期に、屋外ならば感染の危険が少ないということで静かなブームとなった。ふらっとテラスに2人並んでのんびりすることもできるし、折りたたみ椅子を持っていって対面で会話してもいい。これが、N-BOXジョイの提案である。まったりダウナーな感じであまり活動的なイメージではないが、今の空気はそんなものだとホンダは判断したのだ。「スズキ・スペーシア ギア」に始まったSUV風仕立ての軽スーパーハイトワゴンは、「ダイハツ・タント ファンクロス」「三菱デリカミニ」というフォロワーが出現したことで分かるように売れ筋のジャンルになった。ホンダもこのトレンドに乗るのかと思われていたが、斜め上を狙った変化球を投げてきたというわけだ。