片町「ぴるぜん」復活 老舗ビアホール、同業や常連支援で
●隣接ビル解体で壁崩落から5カ月 隣接するビルの解体工事中に起きた事故で壁が崩落し、休業を余儀なくされていた金沢市片町1丁目の老舗ビアホール「ぴるぜん」が今月、営業を再開した。片町の飲食店仲間や全国の同業者、常連客らの支援で、5カ月ぶりに再開にこぎ着けた。忘年会シーズンで連日超満員の店内は「復活を待っていた」との声が響き、活気に満ちている。 ぴるぜんは1968(昭和43)年に創業。本場ドイツのビールや料理が味わえる店として、地元客を中心に半世紀以上親しまれている。 7月15日夕、隣接するビルの解体工事中に何らかの原因で、店舗2階の壁が崩壊し、大きな穴があいた。幸い、店は休みでけが人はいなかった。 夏の書き入れ時を失い、交流サイト(SNS)で現状を伝えたものの反応は少なく、料理長の熊本朱峰さん(37)は店をたたむことも考えた。 支援の手を差し伸べたのは、同じ片町で和食店やイタリアンを営む知人だった。ぴるぜんの料理人3人は調理を手伝うことで生活をつないだ。 現状を知った同業者からも声が掛かった。東京や大阪でチャリティーイベントに参加したり、ぴるぜんの認定タップスター渡邊佳那子さん(45)が東京の名店「ビアライゼ98」に出向くなどしたりするうちに支援の輪が広がった。再建資金を募ったクラウドファンディングでは常連客らから目標額を超える500万円が集まった。 隣接ビルの解体工事の見通しが立ち、営業再開に動き出したのは10月下旬。長期間の休業で「客が離れてしまっているのでは」との心配があったが、SNSで再開を告知したところ、常連客から「待ってました」との反応が返ってきた。 28日夜、店は忘年会の団体客で満席となった。金大生のころ、ぴるぜんでアルバイトをしていた会社員北村星空さん(31)は「忘年会シーズンに間に合って良かった。この店が100年続いてほしい」と笑顔を見せた。 熊本さんは「よりこの店を大事にしていきたいという思いが強くなった」と力を込めた。