城田優、映画『アーネストに恋して』を絶賛! 「愛というエネルギーに変換されたファンタジックな物語」
ニューヨーク・ブロードウェイを中心に傑作舞台の感動を映画館で楽しめる「松竹ブロードウェイシネマ」シリーズが贈る、オフ・ブロードウェイ・アライアンス最優秀ミュージカル賞を受賞したミュージカル『アーネストに恋して』が4日から公開される。これを記念して、ミュージカル俳優としてあまたの賞に輝き、近年では演出家としても活躍する城田優にインタビューが行なわれた。 【写真】『アーネストに恋して』を語る城田優 本作は、子育てと作曲家としてのキャリアとの両立に奮闘するシングルマザーが、20世紀を代表する伝説の冒険家アーネスト・シャクルトン(1874‐1922)と時空を超えて運命的に出会う、奇想天外で独創的なミュージカル冒険劇。 ある夜更け、マッチングサイトに自己紹介動画を投稿した主人公キャット(ヴァレリー・ヴィゴーダ)のもとに、突然20世紀を代表する冒険家である南極探検家のサー・アーネスト・シャクルトン(ウェイド・マッカラム)から返信が届く。南極で船が難破し流氷の上で身動きが取れなくなったシャクルトンは、時空を超えてキャットにアプローチし、壮大な冒険の旅へと誘う。思いがけないことに、2人は互いの中に自らを照らし導く光を見いだすのだった。 エレキバイオリン奏者で歌手/作詞/作曲家として幅広く活躍するヴァレリー・ヴィゴーダが主演のキャット役を務め、力強い演奏と圧巻の歌声を披露。そして個性たっぷりのアーネスト役を、ミュージカル『プリシラ』のウェイド・マッカラムが務める。2人が奏でるインパクトあるミュージカル・ナンバーは、大胆にして痛快無比、見る者に希望を教えてくれる人生賛歌だと絶賛された。 そんな本作を鑑賞したミュージカル俳優・城田優のオフィシャルインタビューが今回公開。本作の魅力や、役者陣の素晴らしさ、さらには舞台に欠かせない“想像力”の是非についてまで、演者として、ときに演出家としての視点であますところなく語られる。 ――映画『アーネストに恋して』をご覧になり、いかがでしたか? 城田:第一印象は、とにかく斬新! 登場人物が2人だけで、タイムスリップのようなSF感があり、ファンタジックで、かつヒューマンドラマもミックスされている。これまで多くの観劇をしてきましたけど、そんな僕からしても設定自体の斬新度数がかなり高い1本でした。 ――キャット役のヴァレリー・ヴィゴーダ、アーネスト役のウェイド・マッカラムの演技はどう受け止めましたか? 城田:キャット側は膨大な数の楽器を扱うということ、アーネスト側は1人2役という演じ分けと説得力が必要で、それぞれ本当に大変な役だと思いました。特にキャットはバイオリンにギターにマンダリン、ピアノ…あらゆる楽器を演奏しながら演技もされていますよね。よくあるエンターテインメントですけど、ミュージカルでやっているのを僕は初めて見ました。 キャットの作曲家という設定もおかげで違和感がないですし、説得力があり、観ていても面白い。日本のミュージカル界に、同じようなことをやれる俳優はいるのかな?と思います。本当にレベルが高いことをしていらっしゃると思いました。 ――2人芝居という独特の空気感の中で、特に印象的だったシーンはありますか? 城田:いやあ、ずっとすごいと思っていましたよ…! キャットのド頭の音楽のシーンは、とにかく好きでした。あのシーンで、「この作品は楽しんでいいんだな」とお客さまが思える方向に導いていて、トゥーマッチなシリアスにならない感じが、この作品を観るにちょうどいい入り口になっているんですよね。 僕は常々、お芝居には想像力が必要だと思っているんです。特に、本作は100年前の偉人と出会い系サイトで知り合い、その2人が南極という僕らが知らない場所に冒険に行くという突拍子もないストーリーですよね。それを信じる想像力、客席に「いやいや、そんなわけ」と冷静にさせない力があるので、そういう意味でも頭の導入がすごい肝だと思いました。いかにお客さんに想像させられるかというのが僕らの仕事なわけで、いわゆるただの会話劇よりも、よっぽど想像力がないと、役者も観る側も楽しめない作品だと思いました。 ――キャットはアーネストに出会い、彼のポジティブさに背中を押され自分の人生を切り拓いていこうとします。その描かれ方については、どう感じましたか? 城田:観る人たちみんなが共感するような、とても人間らしいキャラクターですよね。キャットは出会い系サイトで年齢を偽り、仕事もピンチで、子の父である彼氏ともうまくいっていない。全然、純風満帆ではないんですよね。でも、世の中に生きている人たち、僕も含めて誰もが「自分だけなんでこういう思いをするんだろう?」と思って生きていると思うんです。そこで感情移入の心が生まれるわけです。 キャットは非常にファンタジックな出会いを経て、アーネストに冒険にいざなわれる。冒険=未知なる世界なので怖いけど、そんな人の心を「せっかく1回の人生なんだから、アーネストみたいに冒険しよう」と思わせてくれる。たとえ危険な旅になろうと、自分が知らない世界を知り、突き進んでいく力みたいなものが、キャットもアーネストと出会い、彼と一緒に冒険の片鱗を見て湧いてきたんだと思うんです。「うまくいかなくてもいい、とにかく諦めてたまるか」というマインドが、時に恋や仕事、友情や趣味などの“愛”というものに変換されてエネルギーになると思うんです。彼女の場合はそれがアーネストという存在だったんだなと思いました。 ――最後に、本作は『キンキーブーツ』なども上映した「松竹ブロードウェイシネマ」の最新作です。ブロードウェイの舞台を日本の劇場で観られることについて、城田さんはどう感じますか? またもし本作のアーネスト・シャクルトンと『キンキーブーツ』のローラの共通点があれば教えてください。 城田:ふたりの共通点はチャーミングなところですかね。本取り組みに関してはポジティブなことから言えば、ブロードウェイに行くにはお休みを取り、渡航費、滞在費、観劇の費用など、本当にお金がかかります。どんなに行きたくても、なかなか自由に行けないと思うので、観られないお客様たちにとっては本当に救いでしかないシステムだと思います。現に、僕自身もこの作品を映像で観させていただきましたし、非常に恩恵を受けています(笑)。 その一方で、演者側からすると、生の良さというのがあるんですよね。ミュージカルはその時の役者、お客様との相性で作り出されるものだから、一公演一公演、同じシーンでも違ってくるんです。その瞬間に生まれたエネルギーを生で感じることに価値があるとも思うので、こうした上映サービスも取り入れながら、生でも観ていただければと僕は思います。 松竹ブロードウェイシネマ『アーネストに恋して』は、10月4日より全国順次限定公開。