喫煙シーンNGの時代、任侠ものでも…昭和の魂を継承したベテラン俳優の思い「吸い方、消し方も勉強」
1970年代の青春ドラマで生徒役として人気を博し、今年で芸能活動50周年を迎えた俳優・清水昭博(66)が8月に配信された任侠ドラマ「CONNECT -覇者への道-」で存在感を発揮している。コンプライアンスの厳しくなった昨今、ドラマで「喫煙描写」もNGとなった時代において、昭和を生きたベテラン俳優はどのような思いでいるのか…という点も踏まえ、清水がよろず~ニュースの取材に思いを語った。 【写真】ドラマ「CONNECT -覇者への道-」で重厚な演技をみせる俳優・清水昭博 清水は堀越高校在学中の74年に中村雅俊主演の学園ドラマ「われら青春!」でデビュー。当時16歳のリアル高校生だった。その後も「俺たちの旅」「青春ド真中!」「ゆうひが丘の総理大臣」といった中村主演の日本テレビ系ドラマへの出演が続き、80年代は角川春樹事務所に所属して数々の角川映画に出演。2000年代はVシネマで任侠系の作品にも数多く出演してきた。 最新の出演作「CONNECT -覇者への道-」では「4」と「5」で刑務所から出所した組織の会長を演じる。セリフをしゃべらない時でも「無言のたたずまい」を意識したという。 「今回、黙っているシーンもあって、何もしなくても自分の存在がにじみ出るような感じが出せたらいいなという思いはありましたね」。半世紀にわたる芸能生活で、大先輩の名優たち、恩師の映画監督の薫陶を受けてきた中でつかんだエッセンスが無言の存在感となってにじみ出ていた。 「17歳くらいの時、ディスコのVIP席にいたら。勝新太郎さんが隣の席で飲んでいた。俺、東京出身で、先輩たちがグループサウンズだったり、遊んでる人がいっぱいいて、10代の頃からそういう場所に出入りしてたんです。それで、挨拶に行くと、勝さんから『お前、役者だろ。芝居やってるか?』と聞かれた。『やってません』って答えたら、勝さんに『バカヤロー!役者は普段から芝居してなきゃいけないんだ』と。その時は『なに言ってんだ、クソジジイ』って思ったんだけど、今になってみれば分かる。勝さんは『(石原)裕次郎さんみたいに、しゃべらなくても、人間の魅力でやっていけ』ということをおっしゃっていた。セリフ覚えがいいとか、演技がうまいとかではなく、その存在の魅力が全てだと。そのためには普段からずっと芝居をやっておけと」 角川映画では、「戦国自衛隊」(79年)のロケで寝食を共にした渡瀬恒彦さん、「探偵物語」(83年、根岸吉太郎監督)の現場で一緒になった松田優作さんらの〝破天荒な行動〟を体感した。ゼロ年代以降の任侠Vシネマの現場では70年代の「仁義なき戦い」をはじめとする東映実録路線で存在感を発揮した松方弘樹さんから強烈な刺激を受けた。 「松方さんとは『修羅のみち』(01 -03年)で共演させていただいた。俺と哀川翔がいて、松方さんが哀川に向かって『ブヘ、ブヘヘヘ』と笑った瞬間、哀川はセリフ飛んじゃって、俺たち、何もできなくなった。台本のト書きには『笑う』として書いてない。普通、笑うのに『ブヘヘヘ』なんて発想はないですよ。あの迫力はすごかったですね」 「戦国自衛隊」の斎藤光正監督には「0・5秒の間(ま)」を教えられた。その間は昨年、出演したビールのC Mで活かされたという。「グラスを持って、降ろす時に『0・5秒』という感覚の間を置くと、微妙なタッチが出るんです」。その間は最新作でも活かされている。 今の時代、男の生き様を描く任侠ものですら、喫煙シーンはNGになる。 「俺たち、若い頃はタバコの吸い方を勉強したんですよ。『こういうふうに吸うんだ』、『お前、ここまで吸うのか。じゃ、俺はもっとこっちまで吸うわ』と。『じゃ、消す時、お前どうやって消す?』、『俺はこう消す』とか、消し方も勉強しましたからね。それが今はできなくなった。今回の撮影でもタバコは吸わなかったですね。ヤクザという役作りも変わってきて、ちょっとデフォルメしたかなという感じはあります。本物の人も電子タバコを吸っている時代でしょうし」 そうした制約も含め、時代は変わっていくが、勝さんらの言葉は今も生きている。「今年で67歳になりますが、何もしないでも(存在感が)出るような、そんな芝居ができれば。まだまだ、これからです」。現在、清水は同作の続編撮影に入っている。若い頃に出会った先人の言葉を思い出しながら、役者の道を模索していく。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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