若隆景 真骨頂発揮!持ち味の粘りで大の里止めた V争い残った「俵の中にいる限り、諦めることはない」
「大相撲秋場所・12日目」(19日、両国国技館) 平幕若隆景が全勝だった関脇大の里を止めた。土俵際で執念を見せて寄り切り9勝目。右膝手術からの復活を感じさせる相撲でトップに2差とし、優勝の可能性も残した。大の里は初黒星も単独先頭は変わらず。関脇霧島は大関琴桜を破って10勝目。平幕高安も小結平戸海を突き出して2敗を守り、霧島とともにトップと1差に接近した。大関豊昇龍は関脇阿炎に苦杯をなめ、6敗目を喫した。 この粘りこそが真骨頂だ。上から押しつぶすような大の里の突き落としに、若隆景は左足一本で前のめりになりながら立て直した。さらに続く相手の攻勢も俵の上で踏ん張り、もろ差しから左に振ってうっちゃるように体を入れ替えて寄り切り。土俵下に降りた大の里をちらりと見た後、誇らしげに胸を張った。 初優勝した22年春場所、高安との優勝決定戦をほうふつとさせる下半身の粘り。支度部屋のモニターで見守った兄の若元春も「差せ!いけいけ!残せ!」と絶叫した。持ち味を存分に発揮した白星。若隆景は「何とか残せてよかったかな。俵の中にいる限り、諦めることはない。最後まで一生懸命、相撲をとれてよかった」と、納得の表情を見せた。 大関昇進に迫るホープの爆走をストップ。昨年春場所で右膝に大ケガを負うまでは、自分が同じ立場にいた。元大関候補としての意地を問われると「そういうことは考えずに。自分がとやかく言うことじゃない」と否定。ただ、幕内後半戦の九重審判長(元大関千代大海)は「花道を入る時から『やってやる』って顔だった。気持ちでしょうね。若隆景にしたら、先輩のプライドもある。相撲が終わった後も、いい顔をしていた」と、あふれる闘志を感じとった。 幕内復帰2場所目。抜群の破壊力で白星を重ねていた相手に、堂々と勝った意味は大きい。八角理事長(元横綱北勝海)も「ここまでやれるとは思わなかったが、若隆景が強かったということ。来場所が楽しみ」と復調を認めた。優勝の可能性も残してあと3日。「明日も集中して、一生懸命相撲をとるだけ」と静かに燃える実力者は、最後まで諦めない。