SKEもPRする「ESD」って何?
名古屋市で今年11月、「ESD」に関する国際会議が開かれます。地元ではアイドルグループ「SKE48」を起用したPRも始まりました。聞き慣れない言葉ですが、どんなテーマなのでしょう。ESDは「Education for Sustainable Development」の略。「持続可能な開発のための教育」と訳されます。 「持続可能な開発」というと環境問題のことだと思われるでしょう。確かに出発点は1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた「環境と開発に関する国連会議(地球サミット、リオ・サミット)」での議論です。 地球規模の環境破壊の深刻さが世界中に訴えられたこの地球サミットは、地球温暖化を防ぐための「気候変動枠組み条約」と「生物多様性条約」への各国の署名も始まった画期的な会議でした。 しかし、環境問題を解決するには貧困や人権、非暴力など社会、経済的な問題を同時に解決していかなければならない、という認識も共有されます。会議で採択された行動計画「アジェンダ21」には「教育」の重要性も盛り込まれました。これがやがてESDの考えに深められていきます。
小泉時代の日本が提唱した「ESDの10年」
02年、南アフリカのヨハネスブルグで開かれた「持続可能な開発に関する世界首脳会議(第2回地球サミット、リオ+10)」でESDが正式な議題に上がります。提案したのは他でもない、日本。当時の小泉純一郎首相率いる日本政府団が、環境教育は日本が世界に誇るものだとして、ESDの考えを提唱し、各国の賛同を得ました。 続く同年の国連総会では、ESDを10年にわたって世界で普及、推進するべきだと日本があらためて提案、満場一致で採択され、05年から「国連ESDの10年」が始まりました。 05年はちょうど愛知県で環境をテーマにした国際博覧会「愛・地球博」が開催された年。万博の成功を受け、愛知県や名古屋市はその5年後に国連の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)も開催しました。こうした実績が評価され、ESDの10年を締めくくる最終年会合、通称「ESDユネスコ世界会議」が今年、名古屋で開かれることになったのです。 会議は国連教育科学文化機関(ユネスコ)と日本政府が主催し、まず国内でESDの取り組みに熱心な岡山市で11月4日から8日まで、国内外の学生らを交えた「ステークホルダー会議」を開催。続いて名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で11月10日から3日間の世界会議が開かれます。 参加者は国内外の閣僚や政府関係者など約1000人を含む数千人規模の予定。全体会合ではこの10年間の成果を振り返り、ESDの意義を考察。気候変動や防災、生物多様性など、ESDが含む各分野で行動のあり方が議論され、14年以降のESDの枠組みをアジェンダとして取りまとめる予定です。