透析を止めると殺人罪? 医師兼弁護士「二刀流」でみえた「人体」と「人間社会」の理解
●唯一無二の責任と権限、だからこその充実
―法曹から医師のルートをたどる人は少ないですね どちらも特殊性が高く、専門領域として離れているので、そうなるのは仕方ないかもしれません。ただ、法律家が別の職業を経験することはお勧めです。 東京医科大学は、他分野経験を有する人材を積極的に受け入れるため、2024年11月の入試から大学卒業を要件とする「学士選抜」を開始しました。入学者の多様性の観点から、理系のテストは入学後に医学講義を理解できるかの足切りにしか使いません。最終的な合否は小論文と面接の点数だけで決めるので、高校レベルの基礎学力を有する文系大学卒業者には非常に有利な配点です。 他分野の経験者が医学科生として、新しい環境で、新しい課題を、新しい考え方の青年たちと接することで刺激を受けあうことが期待でき、医師国家試験の合格率は9割超で受験回数制限もないので、ほぼ確実に医師にもなります。 ―二刀流のプロフェッショナルとして、やりがいを教えてください 医師には応召義務があります。法律家は義務ではないですが、それに近いものはあるでしょう。その代わり、プロとしての裁量や権限も大きい。その責任と権限があるからこそ、患者や依頼者の期待に応えられたときの充実感があるんだと思います。 代替がきかないから先生にお願いしたいと多方面から求められることはありがたいです。属人化の弊害を脳では理解していますが、属人化した仕事ほどやりがいがあると、心が言っています。指名で求められた仕事だからこそ、質を上げたい。つまんないなと思われたくない。開き直って、「属人化上等」という心境です。こうやって仕事をしていると、残業時間が大変なことになっちゃうんですけどね(笑)。やりたい仕事だから仕方ないです。 【プロフィール】 竹口 文博(たけぐち・ふみひろ)弁護士 1971年東京生まれ。1997年東京医科大学医学部医学科卒業、医師。2008年博士(医学・東京医科大学)。2017年法務博士(早稲田大学)。2019年弁護士(第一東京弁護士会)。日本腎臓学会 腎臓専門医・指導医。日本透析医学会 透析専門医・指導医。身体障害者福祉法第15条指定医 (じん臓機能障害)。現在、東京医科大学 法人本部統合管理室長・医学科腎臓内科学分野 客員准教授、早稲田大学大学院法務研究科 アカデミックアドバイザー、医療サイバーセキュリティ協議会 法務顧問。