【東京女子】“最悪の親のすねかじりニート”がマスクウーマンになるまで 「死んでいた心が蘇った」出会い
人生のすべてを武器にするプロレスラーになりたい
ミサヲはすぐに行動を起こす。1か月後、両国国技館で開催されたDDTのビッグマッチを見に行っていた。 「男子の中に女子も混じっている試合もあれば、マッスル坂井さんの煽りパワーポイントや山里亮太さんの肛門爆破もあって、さらに髙木さんと葛西さんが出場した両国国技館全体を使った路上プロレスもあって、プロレスってこんなに面白くて楽しいジャンルなんだと知ったんです。その中に東京女子プロレスの提供試合もあって『そうか、女子だけでもプロレスをしていいんだ』『じゃあ東京女子プロレスに入れば、女子だけでこんな楽しいことができるかもしれない』と勝手に思ったんです。普通の就活にすら躊躇していた自分が気づけば、大会が終わってすぐに書類を送っていました」 東京女子プロレスに入門して5か月後、「最悪の親のすねかじりニート」はハイパーミサヲというマスクウーマンとしてデビューを飾った。 「応募したときの書類にも書いたんですけど、路上プロレスで見たレスラーの方々が、自分がくすぶっていたとき、何に対しても無感情だったのに惹きつけられたという意味でヒーローに見えたんですよね。それで、私もそういうヒーローになりたいと。同時に私はダークヒーローであるバッドマンやキャットウーマンが好きなので、彼らのイメージをごちゃまぜにしたマスクを付けて……あとはWWEにいたザ・ハリケーンも参考にしました。あと、子供がヒーローごっこをする時に、風呂敷をマントに見立ててつけるイメージで、初心を忘れないように唐草模様の風呂敷をイメージしたマントをつけるようにしました」 来年2月でデビュー10周年を迎えるミサヲは長いマイクパフォーマンスとずる賢いファイトスタイルを武器に闘ってきたが、入門のきっかけとなった髙木、葛西とはそれぞれシングルマッチでの対戦を実現させ、さらにマッスル坂井ことスーパー・ササダンゴ・マシンとは、自身の結婚発表という重要な局面で関わりあい、ハードコアマッチにも身を乗り出して勝俣瞬馬と激闘を繰り広げた。すべては両国国技館で魅せられた「プロレスの原体験」が、東京女子プロレスでの原動力になっている。 「選手それぞれが思い描いているものを自由にやらせてくれるのが東京女子プロレスだし、この団体だからこそ対戦できたと思っています。そういう環境がありがたいです。あの日に見た、人生のすべてを武器にしてしまうプロレスが好きだし、私もそういうプロレスラーになりたいです」 (24日掲載の後編へ続く)
橋場了吾