『虎に翼』寅子が後輩の女性にかけた「優しい言葉」は「優三の言葉」と重なっていた
『虎に翼』振り返り日記:第22週「女房に惚れてお家繁盛?」 X(旧Twitter)に日々投稿する『虎に翼』に対する感想がドラマ好きのあいだで人気のライター・福田フクスケさん(@f_fukusuke)。連載「『虎に翼』振り返り日記」では、福田さんが毎週末にその週の感想を振り返って伝える。見逃してしまった人も、あのシーンが気になると思った人も、友達と自分の感想をすり合わせる気持ちでお楽しみください。 【画像】「敵地に乗り込む進駐軍のような継母」と言われた、寅子のモデル・三淵嘉子 星家で“家族のようなもの”をスタートさせた佐田寅子(伊藤沙莉)と娘の佐田優未(毎田暖乃)。だが、親切で優しい態度とは裏腹に、星家の子供たちの間には見えない溝が生じ始める。 一方、東京地裁の判事補・秋山真理子(渡邉美穂)の妊娠で、寅子はかつて自分が直面した地獄と再び向き合うことになり……。蓋をしていた問題に一歩ずつ歩み寄っていく第22週を振り返っていく。
8月26日(月)第106回: 朋一の態度を「子供っぽい」と繰り返すのどか
表向きは寅子と優未を優しく歓待する星朋一(井上祐貴)と星のどか(尾碕真花)。しかし、優未がマージャンを「航一さんにいっぱい教えてもらった」と言うのを聞くと、2人の間に微妙な空気が流れる。 先週、お祭りの話をしたときと同じ空気だ。おそらく彼らは父の星航一(岡田将生)にそのようなコミュニケーションをしてもらったことがないのだろう。 父が、寅子と優未の前では自分の知らない顔を見せている。そのことがもたらす感情は嫉妬だろうか、嫌悪感だろうか。 寅子から生活態度について忠告を受けた朋一の口から、思わず「母親面はやめてください」という言葉が飛び出すところに、寅子たちをすぐには受け入れられない彼の複雑な感情が表れている。 しかし、朋一以上に気になるのが、妙に達観したのどかの態度である。 「子供っぽいことはやめて、寅子さんに謝って」と朋一を諌め、「兄はああ見えて、根が子供っぽいんです」と寅子に謝罪するが、「子供っぽい」と繰り返すのが引っかかる。 一方で、原爆裁判の準備手続は、双方代理人から延期の申請があり、なかなか進まない。 国側の代理人の言い分は、「これは法律問題ではなく政治問題」「賠償請求権が放棄されるのが慣例」「放棄される宿命」といったのらりくらりとした言葉ばかりで、原爆被害者に向き合ったものではない。 まず問題に向き合うことすら難しい状態は、星家の家庭問題にも通じるかもしれない。 また、新キャラクターである東京地裁の判事補・秋山の登場も気になる。 姑から「孫はまだか」「男の子を産め」と言われる一方で、「仕事するからには第2の佐田寅子になれ」とも言われる彼女の境遇は、女としても仕事人としても成功しろというダブルバインドに引き裂かれた、新しい世代の女性の理不尽を象徴する存在になっていくのだろう。