魔性ぶりがすごい! フレンチシネマを彩るファム・ファタールたちによる名作映画10選
様々な女性像を演じきり、そして人生さえもドラマティックでミステリアス…ファム・ファタールという呼び名にふさわしい俳優、ロミー・シュナイダー、アヌーク・エーメ、ドミニク・サンダ、イザベル・アジャーニ、エマニュエル・ベアールの5人。それぞれの代表作と魅力を振り返ろう。『エル・ジャポン』2024年1月号より。 photo:AFLO、GETTY IMAGES
ロミー・シュナイダー(1938-1982年)
波乱万丈な人生を送った伝説の名アクトレス フランスの有望な若手女優賞にその名が冠せられているロミー・シュナイダー。美しい瞳とリアルな官能性で、フランス人が選ぶ「今世紀最高の女優」の1位に輝いた彼女だが、出身はウィーン。著名な俳優一家に生まれ、オーストリア皇妃を演じた『プリンセス・シシー』3部作(1955-57年)で16歳にしてヨーロッパ中を虜に。しかしこの当たり役のイメージに疲れ、アラン・ドロンとの出会いから活躍の場をフランスに移す。破局後もドロンを良き理解者とし、大ヒット作『太陽が知っている』('69年)で共演、ヴィスコンティを紹介され『ルートヴィヒ』('72年)では実像に近い“シシー”を演じて評判を得る。恋多き女優といわれ、最愛の息子を事故で亡くすなど、波乱の人生を送ったが、『夕なぎ』('72年)、『追想』('75年)、『サン・スーシーの女』('82年)など多くの名作の輝きは今も。
『太陽が知っている』1969年
南フランスのプール付き別荘に、ドロンとロミーの夫婦、モーリス・ロネとジェーン・バーキンの父娘が集う。愛と嫉妬が錯綜するクライム・ミステリー。当時ドロンが重要参考人となった殺人事件の最中に公開され、空前の大ヒットを記録した。
『離愁』1973年
第二次大戦下の北フランス。ドイツ軍の侵攻を避け、妻子を客席に乗せ、自身は貨車に乗り込む男(ジャン=ルイ・トランティニャン)が、ドイツ系ユダヤ人アンナ(ロミー)と出会う。身動きできない貨車の中、互いに惹かれ合うが……。
アヌーク・エーメ(1932年-)
知的でエレガントなクール・ビューティー 名優ジェラール・フィリップ扮する画家モジリアーニの妻を演じた『モンパルナスの灯』(1958年)で世界的な注目を集め、ヌーヴェル・ヴァーグの真珠と謳われたジャック・ドゥミ監督作『ローラ』('61年)のヒロインを演じたアヌーク・エーメ。またフェリーニの『甘い生活』('60年)や『8 1/2』('63年)など、イタリア映画でもスタイリッシュな存在感を発揮。1966年、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したクロード・ルルーシュ監督作『男と女』では、ムートンコートを颯爽と着こなして大人の愛と葛藤を演じ、ゴールデングローブ主演女優賞を受賞、米国アカデミーの主演女優賞にもノミネートされた。ブロンドのフェミニンな女優勢のなか、濃い褐色の瞳と太い眉、豊かなボブヘアが個性的なクール・ビューティは、永遠のフレンチシックの体現者として今なお女性の憧れであり続けている。