「家賃手頃な仏教の街」「イメージと違って治安もいい!」…。23区では珍しい無人駅がある街「足立区・大師前」は“住むとちょっといい街”だ
「以前はこのあたりにも、八百屋とか魚屋があったんだけど、あちこちに大きなスーパーができてね。小さな小売店は、跡継ぎもいないから閉めちゃった。うちはなんとかやっていけてるけどね」 どこも時代の流れには逆らえないようだ。 写真が趣味という中田さんは、大師前に移ってからすぐの頃に、店の前の通りを撮影した写真を店内に展示している。 「街そのものは古いけど、このあたりの団地は、後から移り住んできた人が多い。そうした人たち同士で仲良くしてね。気を遣いあって生きている感じだね。古くから住んでいる人たちとの交流も盛んだし、落ち着いた、いい街ですよ」(中田さん)
「風景は少し変わってきたけど、最近は若い家族連れも増えてきたし、私らが越してきた頃よりは中学校や小学校も増えました」(中田さん) これは別の住民が語っていたのだが、大師前は家賃も高くないので、若い世代には人気なのだそう。 ■老人介護施設の1階にある団子屋 バブル以前に移り住んできた人たちも年を取った。それでも最近は介護関連の施設も増えてきたので、安心して年を取ることができる。そう語る住民も多かった。
取材の最後に、記念のつもりで西新井大師名物の草団子を買ったのだが、その際にも時代の流れを感じた。 写真は西新井大師の門前にある団子屋(中田屋)が入るビルなのだが、5階建てのうち、1階部分の通りに面したスペースだけが団子屋で、あとは老人介護施設なのである。 以前は割烹の料理店だったが、全面的に改装し、2020年の7月に介護付き有料老人ホーム「はなことばプラス西新井」として、再スタートを切ったのだという。
■無人駅のある街は、“住むとちょっといい街”だった 東京23区では珍しい無人駅の東武大師線の大師前。名物の草団子は、清水屋と中田屋の2つの店が有名だが、今回は中田屋の団子を購入した。20個入りで900円(税込)である。 時代とともに変わってきてはいるが、ど真ん中で大師様がにらみを利かせている限り、「ちょっといい街」であり続けるだろう。不思議な無人駅と、西新井大師を見に行くだけでも楽しいこの街。年末年始でごった返す前に、一度訪れてみてはいかがだろう。
末並 俊司 :ライター