「家賃手頃な仏教の街」「イメージと違って治安もいい!」…。23区では珍しい無人駅がある街「足立区・大師前」は“住むとちょっといい街”だ
海に行っても、山に行っても、まずは匂いを楽しむ。季節を感じるのも、匂いだ。夏には夏の、冬には冬の匂いがある。「大師前界隈の匂いは線香だ」と、脳みそにインプットされた。 駅から北に向かって歩く。西新井大師を越えると、落ち着いた住宅街だ。居酒屋や喫茶店なども程よく点在しており、飽きることがない。 自宅の前で掃き掃除をしていた地元の方に話を聞いた。 「寺と住宅ばかりで、わりとぶっきらぼうな街だけど、日暮里・舎人ライナーに乗れば、数分で舎人公園に行けるんですよ。
四季折々の植物が植わっているから、季節を感じるには最高の公園です。陸上競技場やテニスコートも完備しているから、休日には若者や家族連れがたくさん来る。私も散歩がてら時々行きますね。 あとね、ここらへんは大師様の目が光っているから、犯罪も少ないんだよ(笑)。いろんな意味で、住みやすい街だと思いますよ」 調べてみると、たしかに犯罪の数は少ない。 比べるのは大変失礼なのだが、東武線の近場、竹ノ塚駅のある足立区竹の塚6丁目では「自転車盗:31件。万引き:11件。置引き:1件。部品ねらい:1件。その他:25件」となる。
こちらも繁華街にしては大した数ではないが、大師前に比べると、やはり少しだけ多い。大師前の住民が語る「大師様の目が光っているから」というのも、あながち外れてはいないのかもしれない。 ■仏教の街でパン屋を開いた理由 歴史のある西新井大師が鎮座する街だが、北に少し歩いて環七北通りまで行けば、マンションも立ち並ぶ。その地で長くベーカリーを営む方に話を聞くことができた。 店の屋号は「フレンドベーカリー(足立区西新井2-2-5)」。この地に店を構えて、約半世紀の歴史を持つ老舗だ。
店主の中田浩吉さんは今年81歳になる現役のパン職人である。作業中にもかかわらず、快くインタビューに応じてくれた。 「もとは浅草で縫製工場をやっていたんだけど、こっちに土地を見つけたんで、思い切って移ったんですよ。まずは玩具店をやっていた。その後に、仲間がパン屋をやるというので、興味を持って、そこから修行してね。昭和52年(1977年)にパン屋を始めた。そこからずっと続けてるんですよ」 今では地域になくてはならない店のひとつとなっている。