グラベルにも世界選手権、そのルール「海賊の掟」を解説|竹下佳映のグラベルの世界
グラベルにも世界選手権、そのルール「海賊の掟」を解説|竹下佳映のグラベルの世界
ロードの世界選手権が注目されているが、じつはアメリカにはグラベルレースにも世界選手権がある。非公式ながら毎年グラベルの世界選手権にあたる「グラベルワールド」がアメリカで開催されてきた。さらにホットな話題としてUCIが2022年に国際自転車連合(UCI)公認グラベルレースシリーズとUCI公認グラベル世界選手権を開催するというニュースもあり、まさに今後のグラベルがどういう展開になるのか気になるところ。 この元祖世界選手権ともいえる「グラベルワールド」について、2016年に世界チャンピオンに輝いた竹下佳映さんがレポート。ちょっと変わったグラベルのレギュレーション、「海賊の掟(つまりルール)」についてお伝えする。
グラベルワールド=グラベル世界選手権
先日の投稿でお話しした、コロラド州での「SBT GRVL (エス・ビー・ティー・グラベル)」というグラベル大会の翌週末に、ネブラスカ州の州都リンカーンで行われたグラベルワールドのレポートです。 前回の記事はこちら 。 直訳すると、グラベル世界選手権になります。グラベルには競技連盟のような統括組織が絡んでいないので、ロード、トラック、MTBのような、公式の世界選手権ではありません。大会の名前は冗談で始まったのであろう、非公式のグラベル世界選手権です。
主催者が海賊自転車協会、だから海賊の掟?
主催者はパイレーツ・サイクリング・リーグ(海賊自転車協会)という地元の自転車グループです。元々、自転車競技連盟のルールばかりでがんじがらめになりたくない、コースマーシャルも賞金もなしで、自由にレースをして自転車を楽しみたい。そして思う存分走り終わったら皆でビールで乾杯しよう! と言う仲間たちが集まってできたグループで、2010年に一回目のグラベルワールドの開催となりました。 ナビゲーションはキューシートのみ、サポート皆無で、チェックポイント設置もされないので、全行程走破した証明として使われたのは、途中で立ち寄る小さな町の古びた商店で購入する宝くじだったりと、手作り感と創作性にあふれるグラスルーツ(草の根)な大会です。 私が初めて参加したのは2015年でした。その年は宝くじチケットがまだチェックポイント代わりに使われていて、私も最初「えっ? 」と驚いたのを覚えています。 私は2016年に女子総合優勝し、グラベルワールドのチャンピオンジャージを獲得しました。非公式とは言え世界選手権なので(笑)、アルカンシエルに似せた5色のストライプが入ったジャージが授与されます。 ストライプの色の順番は違いますし、パイレーツ・サイクリング・リーグのロゴも入っているオリジナルデザインで、ユーモアに溢れています。 余談ですが、2017年になんとUCI本部がパイレーツ・サイクリング・リーグに連絡を入れ、ストライプ使用を止めさせるというハプニングがありました。その頃はまさか誰も予期していなかった出来事です。チャンピオンジャージは今も続いているのですが、写真にもある私が獲得した2016年ジャージが、ストライプの入った最後のジャージデザインとなりました。貴重なコレクションです。