藤井聡太21歳が「独創的で豊かな発想力」と絶賛…山崎隆之43歳「藤井さんを悩ませたい」15年ぶりタイトル挑戦“山ちゃん”とは何者か
実力差はあるが、ほかの棋士の希望になるために
山崎八段は藤井棋聖とのタイトル戦に臨み、次のように心境を語った。 「挑戦できると思っていなかったので、不思議な感じです。藤井さんとは実力差があるのは分かっていますが、見ている方が最後まで勝負が不明と思うような将棋を指したい。踏み込んだ指し方で勝てば、ほかの棋士の希望になるでしょう」 あるスポーツ紙の記事によると、山崎は今年3月に左目の視野が欠ける緑内障の疑いがあると診断されたという。手術しても完治はなく、現在は点眼薬で進行を遅らせている。そんな状態なので、最後の大舞台と思って臨むそうだ。
「独創的で豊かな発想力」と藤井が称える山崎将棋
藤井と山崎の公式戦での過去の対局は2局ある。2018年9月の王位戦予選と、21年7月の竜王戦・決勝トーナメント。前者は山崎が藤井の攻めを柔らかく受け止め、機を見て反撃して寄せ切った。後者は藤井が激しい寄せ合いを制して勝った。 AI(人工知能)による形勢評価において、藤井将棋は右肩上がりで良くなるのが特徴で「藤井曲線」と呼ばれる。一方の山崎将棋は一進一退の末に逆転するW字が特徴で「山崎曲線」と呼ばれる。どの曲線になるかが勝負のカギとなる。 なお、山崎は以前に奨励会の幹事を務めていて、藤井は1級時代の2014年から16年に四段に昇段するまで時期が重なっていた。奨励会の幹事と会員が後年にタイトル戦で対戦するのは珍しい。 棋聖戦五番勝負第1局は6月6日に千葉県木更津市のホテルで行われた。藤井棋聖と山崎八段は前夜祭で次のように挨拶した。 藤井「山崎八段は独創的で豊かな発想力に支えられた将棋を指します。未知の局面における判断力や対応力が問われるシリーズになると思います」 山崎「藤井棋聖に挑戦できるのは、棋士として本当にうれしいです。思い切った将棋を指して、五番勝負を戦い抜きたいと思います」
第1局、藤井は本意ではなかったようだが…
第1局では振り駒が行われ、山崎の先手番に決まった。戦型は相掛かり模様。山崎は2筋で飛車先歩交換をできるのに、保留して中住まい玉にする駒組み手順を進めた。先手番の優位を失うが、長い戦いの中で独自の展開を目指したようだ。観戦したある棋士は「少し悪くならないと力が出ない」と、苦笑しながら山崎将棋を評した。 先に動いたのは藤井で、△3五歩以下の順で攻めた。 本意ではなかったようだが、相手陣の左側が「カベ銀」の悪形という状況を好機と見た。さらに△6三角と中段に打って3筋の桂頭を攻めた。 山崎は自陣の1筋に角を打って迎撃し、激しい攻め合いとなった。山崎は▲2四飛と進める強手を指したが、藤井の攻防の好手順を見落として苦しい形勢に陥った。藤井は終盤でカベ銀をとがめて寄せ切り、緒戦を90手で勝利した。
「のびのびと指し、藤井さんを悩ませたい」
両対局者は終局後に、次のように感想を語った。 藤井「序盤からあまり経験したことのない展開となり、どんな構想で指していくのか、判断がかなり難しい将棋でした」 山崎「序盤で工夫を凝らしたけど、弱気になってさえない戦いとなりました。第2局ではのびのびと指し、藤井さんを悩ませたい」 棋聖戦第2局は6月17日に新潟県新潟市の旅館で行われ、愛知県名古屋市、兵庫県洲本市と転戦する。関西所属の山崎は、淡路島で行われる第4局まで何とかたどり着きたいという。
(「将棋PRESS」田丸昇 = 文)
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