詩の“巨星” 谷川俊太郎さん死去 「励まされた」「心にぽっかり穴が…」鹿児島の関係者やファンら悼む
19日に訃報が伝わった詩人の谷川俊太郎さんは朗読会や講演会にも力を入れ、鹿児島市や湧水町など県内各地で詩の世界やその魅力を伝えた。多くの人が交流し、創作の激励を受けた人も。関係者らは「励まされた」「優しく気さくだった」と“巨星”の死を惜しんだ。 元大学教授の種村エイ子さん(78)=鹿児島市=は1996年当時、代表を務めていた「かごしま文庫の会」主催で谷川さんを鹿児島市の県文化センター(宝山ホール)に招き、話をしてもらった。種村さんが対談相手を務めた。 幅広い年代に人気があるだけに1500人が入る大ホールは満杯で立ち見も出るほど。サインしてほしいと教科書を手にした子どもも並んだという。舞台では手がけた絵本や詩の朗読を次々と披露。「とっても気さく。詩の世界、言葉の世界をいろんな人と分かち合いたいという気持ちが人一倍あった」と振り返った。 鹿児島弁で作品づくりに取り組む児童文学作家、植村紀子さん(61)=同=もこの講演に足を運んだ。「『地方の言葉で書き続けるのは大切なこと』と優しく語りかけてもらった。励まされた」と感謝する。
今年出版した「鹿児島ことばあそび3」を送り、9月中旬に電話で話したのが最後となった。「100歳まで元気でいてと願っていたのに」とショックを隠しきれない様子で語った。 「心にぽっかり穴があいたよう」と声を落とすのは元小学校教諭で音楽公演などを手がける徳田豊志さん(68)=同。谷川さんの長男で作曲家の賢作さんを通し約15年前から親交があった。「簡単な言葉で表現しているがふに落ちる。そんな詩のすばらしさを知ってほしい」と各地で朗読会などを企画。「詩を身近に感じたり、励まされたりした人は多いはず。もう一度鹿児島に来てほしかった」と残念がった。 昨年9月には同市の吉野東中学校で、谷川さんが詩を朗読するビデオレター上映もあった。当時校長だった東谷山中学校の田中真一郎教諭(61)は「息遣いを感じられる気持ちのこもった朗読に生徒たちも胸を打たれたようだった。貴重な機会をいただいた」と悼んだ。
南日本新聞 | 鹿児島