スマホが突如手足と意思を持ったら…謎の状況から始まるハプニングコメディ

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。コミックヴァルキリー「ヤンキー悪役令嬢 転生天下唯我独尊」(コミックス第3巻は2024年2月8日(木)発売予定)などの作品がある漫画家の赤信号わたる(@GoAkashin)さんが発表した「朝起きたらスマホに手足が生えてた話」もその1つだ。 【漫画】「朝起きたらスマホに手足が生えてた話」を読む Amazon Kindle インディーズで1000件以上の評価を集める無料電子書籍「赤信号わたるの漫画交差点【短編集】(2)」に収録の同作は、タイトルの通り目覚めたら自分のスマートフォンに手足が生えていたという奇妙なシチュエーションから始まるコメディ短編。 個人情報の塊であるスマートフォンが意思を持って動き回ることで起こるハプニングを描き、読者から「テンポがあまりによすぎる」「パワーがすごい」と反響を集めた作品だ。今回は、赤信号さんに本作のこぼれ話や、電子書籍制作について取材した。 ■「個性はスマホに凝縮」一見カオスな発想は友人の一言から ――作品の着想について教えてください。 【赤信号わたる】友人のアーティストがスマホを持ち主に合わせてデコレーション＆加工する作品を作っていて「現代人の個性はスマホに凝縮されている」と言っていたのが面白かったので、いつか漫画にしようと前から構想を練っていました。 ――不思議な設定から疾走感あふれる展開が大きな魅力です。制作時はどんなところを軸に描かれていったのでしょうか？ 【赤信号わたる】人型になったスマホが起こす事件を通して、親しい人にも知られていなかった持ち主の個性がわかっていくと構成にしたかったのでそこを工夫しました。ただ、お気に入りは最後の友達の「◯ね！」という台詞です(笑)。あれはある種、それまでに培った主人公との信頼関係がないと嫌な奴になってしまいかねない台詞なのですが、ラストに持ってきたことで上手く笑いにできたと思います。 ――発表した作品を、短編集として無料の電子書籍として公開されています。この取り組みを始めたのは何故ですか？ 【赤信号わたる】実は、電子書籍を公開しているKindleインディーズマンガという形式だと、読者にとっては無料なのですが、ダウンロード数や読まれたページ数に応じて分配金という形で報酬が支払われるのです。元々WEBに無料で発表していた作品のストックがたくさんあったので、せっかくならまとめて出版してみようということになりました。もちろん、単純に読んでくださる読者さんの数も増えることもとてもありがたいですね。また、近年のネット社会では情報が散逸してしまいがちなので、『まとめる』ということにも価値が生まれると思ってます。 ――商業連載と並行して作品を制作するのは大変なことだと思います。その中で、赤信号さんが個人制作をコンスタントに続けていく思いを教えてください。 【赤信号わたる】大前提として、できるだけたくさん作品を描きたいというそれ以上分解しようがない欲求があるのですが、それと同じくらい恐怖心があります。この数年で世の中の急激な変化とともに漫画も大きく変わっていきました。SNS漫画や電子書籍、縦スクロール漫画などなど……。でも、わずかな期間に興隆したということは、わずかな期間で衰退する可能性もあります。 次にどんな時代がくるのか、最後のところは誰にも予想できないので、何が起きても常に対応できるようにさまざまな形式や媒体で『今から活動しておかなければ漫画の仕事を続けていけなくなってしまうかもしれない』という恐怖心が原動力に繋がっています。 取材協力：赤信号わたる(@GoAkashin)