避難所のストレス源「ニオイ」、課題解決に学生のアイデア
避難所での生活は厳しい。知らない人たちとのプライバシーのない共同生活には数多くのストレスの元があるが、見過ごされがちなのが「におい」だという。そこで、パナソニックの「ナノイー技術」を活用した2つの製品が生まれた。京都の大学生が被災者の話から発案したにおいを消す靴箱とバッグだ。クラウドファンディングで資金を集めて製造し、もしものときに避難所になる全国のこども食堂に提供される予定だ。 パナソニック くらしアプライアンス社、京都工芸繊維大学、アイデアの事業化を支援するUCI Lab.は、2021年、デザインとクリーンテクノロジーによる被災地の課題解決を目指す「いつもともしもの みんなの快適 共創プロジェクト」を発足し、学生のアイデアをもとに避難所の「におい問題」に取り組んできた。そうして、「みんなの快適 シューズ・ボックス」と「みんなの快適 なんでもバッグ」が誕生した。 豪雨被害に見舞われた人たちが暮らす避難所では、汚泥やカビなどの悪臭が充満する。しかし、においは命に関わるものではないので、これまで見過ごされてきた。NPO法人つなぎteおおむたの彌永恵理氏は、「くさいとか、もう関係ないんです。全員くさいし。もう『くさい』って言ってる場合じゃない。髪も洗えないし、身体も洗えないから、みんなでくさいから平気になってしまっている部分があるんです」 と話す。ニュース映像では、においまでは伝わらない。大変な我慢を強いられていることを、あらためて感じさせられる。そうしたストレスは心身の不調を招く深刻な問題だ。 そこで同プロジェクトは、パナソニックのナノイー発生器とコンパクト脱臭機を使った靴入れとバッグの開発を始めた。実際に被災地に足を運び、被災者の意見を聞きつつ改良を重ね、さまざまなアイデアを盛り込んだ製品ができあがった。シューズ・ボックスもバッグも、避難所専用ではなく、普段から便利に使えるよう工夫されているため、避難所でも違和感なく使えるのが特徴だ。 ナノイーは、空気中の水分に高電圧を加えて生成される、水に包まれたナノサイズの微粒子イオンで、空気中の有害物質やにおいの元になる分子を分解するというパナソニックが開発した技術。実験では、土のうに入っていたタオルと長靴は、最初は、環境省が定める悪臭防止法の基本尺度とされる6段階臭気強度法で4.0(強いにおい)だったものが、5時間後には1.3(やっと感知できるにおい)にまで低下するという高い性能を示した。 クラウドファンディングは、1月15日からCAMPFIREで開始される。支援金で10セットを製造し、「いつもは地域の人が集う居場所になっていて、もしものときに安心できる避難所にもなる場所」に寄贈する予定だ。そこには、全国こども食堂支援センターむすびえが運営するこども食堂と、広川町社会福祉協議会の活動拠点が含まれる。
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