秋田からパリへの挑戦「駅弁だって『パリ』へ行ってやろうじゃないか!」
日本では120年あまりの歴史があるとはいっても、フランスではぽっと出のお店です。フランス国鉄は、なかなか相手にしてくれませんでした。それでもめげずにチャレンジを続けて2021年、パリ花善は、フランス国鉄に認められ、パリ・リヨン駅で、半年限定ながら、「駅弁」の販売にこぎつけます。
看板商品は、稲庭うどんやきりたんぽが入った、「ラ・プロバンス・ド・アキタベントウ」。秋田名物がいっぱいのお弁当が駅に並ぶと、次から次へと売れていきました。 順調に滑り出したかに見えた矢先、フランス国鉄がまさかの通達を出します。新型コロナウイルスの再流行のため、列車内での飲食を全面禁止してしまいました。 お店は売り上げが6割も減少、でも、八木橋さんは、この数字に心が躍りました。 『列車のなかで駅弁を食べるという日本のカルチャーが、フランスにも届いていたんだ!』
再び列車の飲食が解禁されると、駅のお店を訪ねるお客さんも増えてきました。 「おいしかったから、また来たよ!」 味にこだわりのあるパリの人たちから、そんな声をかけてもらうと、八木橋さんは嬉しさが止まりませんでした。 日本の会社が、フランスで「駅弁」を継続的に販売するには、まだまだ大きな壁がありますが、いまも八木橋さんは、秋田とフランスを行ったり来たりする日々を送っています。 じつは今月、八木橋さんは、ちょっと嬉しいことがありました。かつて、八木橋さんに「だっせぇ!」と言っていた息子さんが、花善が誇る「鶏めし」作りの修業を始めてくれたのです。その思いに、八木橋さんも父親の顔で熱く語ってくれました。 「もう一度、チャレンジしますよ。ニッポンの駅弁文化を世界へ発信するために……」