「このおっさん、難しいこと言うな」欽ちゃんファミリー佐藤B作、“稽古の鬼”萩本欽一の教え
「運は全部仕事に使え」
全国的に知名度を得たことで、「劇団東京ヴォードヴィルショー」には若い中高生のお客さんも増えたそう。だが、 「こっちは『週刊欽曜日』では絶対やらないような不まじめなことをしていたから戸惑いましたよ。何やってもキャーキャー言うから、『うるせぇ!』って舞台上から叫んだこともありました(笑)」 共演者に若手が多い中、B作さんと萩本さんとの年齢差は8歳。演者の中では、もっとも年が近く、また共に座長という共通項もあったため、「それなりに信用されている感じはあったと思う」と振り返る。 「ただね、ホントに反省会が長かった。普通、反省会ってお酒を飲みながらとかでしょ。ところが、大将はお酒を飲まないから収録直後に控室で行う。ひと通りダメ出しが行われると、そろそろ終わりそうだなって雰囲気になって、示し合わせたようにみんなが“余計なことを言うな”って顔をするの。なのに、(清水)善三が手を挙げて、『あそこはどうしたら』なんて言うんだよ。そこからまた1時間……ホントに善三は空気が読めなかった!(笑)」 あるとき、車に乗り込もうとした萩本さんに質問をした共演者がいたという。「片足が車の座席に乗っかって、半身の体勢のまま30分以上ダメ出しが続いたからね」。B作さんは、「あんなに細かくて、異常にこだわる稽古の鬼はいない」と畏怖の念を漏らす。 「『運は全部仕事に使え』という人です。ゴルフに行って、雨が降ると喜んでいた。『晴れるために運を使わなくてよかったな』って(笑)。持っている運は、みんな一緒。それをどこに使うかによって、その人の人生が変わると。たしかに、僕が大将のもとへ挨拶に行き、声をかけられたのも運ですよ。萩本さんと出会って悪いことって何にもない。稀有な人だと思います」 取材・文/我妻弘崇