漫才師・今くるよさん、命日に感じたコンビの深い絆 今いくよさんとたった一日違い
【ドクター和のニッポン臨終図巻】 2500人の患者さんをお看取りしてきたので、確率的に言えば当たり前なのかもしれませんが、ときどき旅立ちの日付のご縁を感じることがあります。 【写真】いくよさんと一緒に「どやさ」を披露するくるよさん 「おじいちゃんとおばあちゃんは、同じ日に旅立ちました」 「兄弟が同じ命日になりました」 そこに何か不思議な縁を感じてしまうのが人間というものです。 関西・女性漫才コンビの先駆けであった「今いくよ・くるよ」さん。出会いは高校のソフトボール部。いくよさんが、「私ピッチャーでエース。くるよちゃんキャッチャーでロース」とボケて、くるよさんが突っ込むギャグが大好きでした。いくよさんが亡くなったのは、2015年5月28日。享年67。死因は胃がんでした。 その通夜で、「日本一の相方とやってこれて、私ホンマに幸せやった。真っすぐに天国に行っていただきたい。素晴らしい人でした」と語っていた、相方の今くるよさん。 それから9年たった今年5月27日、大阪市内の病院で亡くなりました。享年76。死因は膵(すい)がん。たった一日違いの命日に、コンビの絆の深さを感じたのは僕だけではないでしょう。 膵臓がん(膵がん)が増えています。日本では、30年前の10倍以上に増加しているといわれています。確かに、僕の友人、知人でも膵臓がんで亡くなった人が立て続けにいました。 「がん≒治らない」と考える時代はとっくに終わったと思いますが、膵臓がんだけは、5年生存率は男女ともに10%以下で、全がんの中でもっとも低いがんとして知られています。いまだ治療が難しい「難治がん」なのです。しかし、膵臓がんになるリスクを減らすことはできます。 僕は数年前に『糖尿病と膵臓がん』(ブックマン社)という本を書きました。糖尿病になると、膵臓がんになる確率が2倍に増えることがわかっています。さらに糖尿病の発症から1~3年がもっとも膵臓がんになりやすいのです。 糖尿病が急に悪化した場合(ヘモグロビンA1cの数値が急に悪化するなど)は、膵臓がんのサインである可能性も高いです。そして、糖尿病の治療を続けながらのがん治療は、いろいろな制約が伴います。これが生存率を妨げている理由の一つでもあるでしょう。すなわち糖尿病を予防すること、悪化させないことこそが膵臓がんのリスクを下げることに直結します。基本は食事の改善と、歩くこと。