【解説】解散見送り…支持率低下に自公“亀裂”も影響? 今後は臨時国会冒頭が“ベスト”?
日テレNEWS
岸田首相は衆議院解散という“伝家の宝刀”は抜きませんでした。自民党内からは「今が解散のチャンス」との声も聞かれた中で、なぜ見送ったのでしょうか。 ●解散風なぜ吹いた? ●「トラブル」と「亀裂」 ●解散の“ベストタイミング” 以上のポイントを中心に詳しく解説します。
■“解散風”吹くも…重要法案が成立「信を問う」理由はなくなり
衆議院の任期満了までまだ2年以上ある中で、なぜ“解散風”が吹いたのでしょうか。 岸田首相はこれまで「解散・総選挙については考えていない」と繰り返し強調してきました。ただ、4月の補欠選挙での勝利や先月のG7広島サミットの成功により、「解散に踏み切るのでは」との声が上がっていました。 こうした中、岸田首相は13日、解散・総選挙について、これまでの「考えていない」からかなり変わり、「情勢をよく見極めたいと考えております」と述べました。 つまり、今の国会での解散を行う可能性も“排除しない”という考えを示したのです。これにより、「一気に解散風が強まった」との声が与野党の議員の中からも上がってきました。 その2日後の15日、岸田首相は記者から解散について問われると、今の国会では見送る考えを表明しました。 ――今国会での解散はしないということでよろしかったですか? 岸田首相 「解散については、今は、今国会での解散は考えておりません」 このタイミングで解散を見送った理由について、首相周辺からは「防衛力の抜本的強化」の裏付けとなる財源確保法案や、LGBT・性的マイノリティーの人たちへの理解を促進する法案など「重要法案の成立のめどがたったためだ」という話や、「解散するかしないか検討を続けてきたが、法案審議の状況をみて最終判断をした」との話が聞かれました。 そして、これらの法律は16日、可決・成立しました。そのため、これらをめぐっては解散して国民に信を問う理由はなくなったわけです。
■支持率低下・公明党との亀裂…“内向き”理由も?
これらの法案を成立させた上で解散するという判断もあり得たわけですが、実は今回、“別の要素”も解散見送りにつながったという見方があります。 その1つは、支持率です。先月のサミット期間中に行ったNNNと読売新聞の世論調査では、岸田内閣の支持率は56%で、8か月ぶりに50%台に回復していました。 ところがその後、首相の長男で秘書官だった岸田翔太郎氏が不適切な行動で辞職したり、マイナンバーカードのトラブルが次々と明らかになったりして、内閣支持率が下がってきています。 もう1つは、連立を組む公明党との関係に今、亀裂が入っていることです。東京での「選挙協力解消」となるなど関係がぎくしゃくしています。公明党の支持母体である創価学会関係者からは「もし今、解散するなら自公政権の崩壊になる」と牽制する声も上がるほどです。 こういう状況下で解散して選挙をしても、“もくろむような勝利にはつながらないのでは”との見方もあったのです。 ただ、このような話は、私たち国民に寄り添った理由ではない、内向きな論理、理由に聞こえてしまいます。 今回の解散見送りについては、自民党内でも「ホッとした」「当然だ」との声が上がっています。 一方で、ある自民党幹部からは「絶好の機会だった。こんなチャンスはもうあるか分からない」と悔やむ声も聞かれました。その理由は、“今ならまだ野党側の体制も整ってない”、“今後確実に支持率を上げる材料が見当たらない”というものです。