3Dホログラムでよみがえる「正殿」 多賀城創建1300年〈宮城〉
仙台放送
11月23日から、多賀城創建1300年を記念したイベントが始まりました。イベントの目玉は、3Dホログラム技術を使って再現された、多賀城政庁の「正殿」です。制作した人には宮城への特別な思いがありました。またイベントの背景には県の新たな観光戦略もあります。 創建1300年を迎えた今年、「南門」が復元された「多賀城跡」。多賀城は奈良時代の724年に設置され「陸奥の国」の国府が置かれるなど、古代東北の政治・文化・軍事の中心地でした。 奈良県の平城宮跡や、福岡県の大宰府跡とともに、日本三大史跡に数えられる、東北有数の歴史名所です。 ボランティアガイド 「岡山、長野、千葉、関東も多い」 「今年特に1300年ということで、我々ガイドも一生懸命やらせていただいている」 現在は基礎だけが残る「正殿」跡地に…当時の建物の大きさ、高さ12メートル、幅20メートル以上の骨組みをつくり、特殊なシートに映像を透過。美しい3Dホログラムで復元するイベントが、11月23日から始まりました。 訪れた人 「きれいで楽しかったです」 「すごくきれいでした」 「これをきっかけに多賀城のことをもっと好きになってもらえれば」 オープニングセレモニーに出席した村井知事は、この取り組みのねらいに次のように話しました。 宮城県 村井知事 「ナイトタイムエコノミー夜の時間、これを使って経済を回していく。これ非常に重要なものだと思っています。今まで宮城県は夜の時間にお客さんに活動していただいて、お金を落としていただくというようなことに力を入れてこなかったものですから、これからこういったイベントをいろんなところでやっていきたい」 今回の復元を手がけた、東京都の3D映像演出会社代表取締役の、藤原一秀さん。全国でこうした夜に楽しむイベントや娯楽=ナイトコンテンツを手がけていて、10月、PR動画撮影のため、現地を訪れていました。 藤原さん自身は宮城で生まれ育ったわけではありませんが、実はこんな縁が…。 3Dホログラムを手がける 藤原一秀さん 「レディー・ガガさんが当時ティーカップを日本のために口紅をつけてオークションに出されて、それをオークションで購入したのが叔父」 震災直後、世界的に人気を集めるアメリカの歌手・レディー・ガガさんが被災地支援のためにチャリティーオークションに出品したティーカップ。これを600万円で落札し、宮城県に寄贈したのが、藤原さんの叔父で、大崎市の歯科医師だった弓哲玖さん(享年54)でした。 大崎市の歯科医師 弓哲玖さん(享年54) 「ティーカップをきっかけに被災地のことを皆さん思い出してくれる。その分だけでも風化しないという思いがある」 翌年、そのティーカップが一般公開された場所が、多賀城市にある東北歴史博物館。公開を前に、弓さんは病気でこの世を去りましたが、叔父が暮らした宮城に貢献できる機会を模索していたといいます。 3Dホログラムを手がける 藤原一秀さん 「叔父がつないでくれた運命的なご縁を強く感じたので、今回プロジェクトのお話が耳に入ったときに是が非でもというところで」 特別な思いを持って、臨んだ今回の制作。 国内最大規模の3Dホログラム復元。実際には見たことのない建造物を1300年の時の流れとともにイメージし新たな体験をしてもらいたいと考えていました。 3Dホログラムを手がける 藤原一秀さん 「こんなに大がかりなのは、やったことないですね」 迎えた初日。午後5時のイベント開始から多くの人が訪れ、子供たちも食い入るように見つめていました。 3Dホログラムを手がける 藤原一秀さん 「ほっとしてますね。叔父を看取ったときも、いつか宮城・仙台で恩返しを、叔父の代わりにできたらいいなと何年も前から思っていたので、自分自身はよかった。きょうという日が成功したかなと感じている」 今回のイベントでは、このホログラムだけでなく「南門」からの道にも光の演出が施されました。そして…。 「乾杯~」 1300年記念のクラフトビールや地酒、地元の食材を楽しめる飲食ブースが設置され、事業者はナイトタイムエコノミーとの相乗効果を感じていました。 出店事業者 「宮城や多賀城を知ってもらういい機会だなと思っています」 さらに…光の色が変るフォトスポットを設置。こうしたいわゆる“映え”を意識した取り組みの効果について、国内・国外の旅行事情に詳しい専門家は。 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん 「東北においては夜、飲食店等は開いていますが、それ以外、特にお子さまが楽しめる夜のコンテンツというのがかなり少ない。特に日本が空気が澄んでいて、このプロジェクションマッピングが映えるということもありますので、そういったところで、特に今SNS映えを非常に重要視している外国人特に若い観光客においての、引き・魅力というのがあるのではないか」 最先端の技術と1300年の歴史が結びついたこの多賀城で、宮城の新たな観光の形が、生まれています。
仙台放送