レッドブル、”メルセデスのアイデア”採用に「感情的にならないように、より良いモノを選んだ」
レッドブルF1の新車RB20は前年からの正常進化とされていたが、いざ発表されたマシンは外見が大きく変化した。 【ギャラリー】メカから走行写真、ドライバーポートレートまで! F1バーレーンテストの写真を一挙お届け 各チームが多かれ少なかれ、前年のレッドブルRB19を参考にしたマシンを登場させる中、レッドブルはサイドポンツーンやエンジンカウルのデザイン、冷却用の開口部のレイアウトなど大幅に変更した。実際、この動きはRB19を”参考”にしたライバルを追い詰める究極の方法だと見る向きもある。 プレシーズンテストでのRB20のパフォーマンスを見る限り、レッドブルはすでに新車から十分なパフォーマンスを引き出しているように見える。 しかしそのレッドブルも、ライバルが投入したマシンのアイデアを取り入れることに当初は抵抗があったようだ。というのもRB20は、メルセデスがかつて使用していたものに近いデザインのエンジンカバーや、ゼロポッド時代の縦型インテークなど共通点がいくつか見受けられる。 もちろん、全く同じアイデアを使ったわけではないが、レッドブルもメルセデスのエッセンスを取り入れたことは否定しない。 レッドブルのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェは、自分たちで作り上げたアイデアよりも、他チームが思いついたアイデアを真似るという決断には感情的な側面があったと語った。 レッドブルが、メルセデスが捨てたアイデアを取り入れたことに、皮肉を感じるかと尋ねられたワシェは、motorsport.comに次のように答えた。 「そういう見方ではなくて、別の見方をしている」 「(デザインを決める上で)感情的にならないようにしていた。最初のリアクションは『ああ、自分たち自身のアイデアを持っていた方が良い』という感じだった」 「でもある時点で一歩引いて、『ストップウォッチと我々のシステムはどちらが優れていると言っているのか』と言わなければならない。だから色々テストをして、より良いモノを選ぶんだ」 「人間であれば、『自分のことは自分でやりたい』と言うものだ。しかしそれは危険なことだ。なぜなら、自分の基準で考えなければならないからだ。どちらがいいか、という基準であればより良いものを選ぶんだ」 「それに公平を期すために言えば、(メルセデスのアイデアと)全く同じというわけではない……かなり良くなっている」 ワシェは、今季のマシンにこのような抜本的な改良を施した背景には、圧倒的な強さを誇るRB19のパフォーマンスが頭打ちになりつつあると感じていたことがあると説明している。 2023年シーズン、ライバルたちが迫ってきていることをよく理解していたレッドブルは、大きく飛躍するためにはこれまでとはまったく違うことをするしかないと考えたのだ。 決断のきっかけについて訊かれ、彼は次のように答えた。 「シミュレーションと数字に基づいたものだ。他のチームも追い上げてくるから、かなり改善しなければならないことは分かっている。そして我々のコンセプトは多かれ少なかれ、プラトー(停滞期)にあったことを知っていたんだ」 「もっと違う発展を望むのであれば、少しばかり賭けに出なければならないし、もっとリスクを負わなければならない。だから、我々はかなり早い段階で、より多くのリスクを背負う決断をしたんだ」 「これは我々がどうマシンを開発していくかという面での進化であり、全体的な戦略を大きく変える自由を得るための後押しであることは明らかだ」 とは言え、ワシェはレッドブルがギャンブルをしたわけではないと強調した。 「我々はギャンブルはしない。ただリスクを負っただけだ。そのふたつは違う」 「分からないことに基づいて物事を行なうことはない。この方向に行きたい、そのために何ができるか? 何をすればいいのか? それを考えれば、自ずと解決策は見えてくる」 「ギャンブルはしない。その代わり、もし変化を求めれば、維持するよりもリスクが高くなるのだ。それならもっともっと研究し、リスクを最小化しよう。正直なところ、空力部門は非常に、非常に良い仕事をしてくれた」
Jonathan Noble