月100時間超の残業も「管理監督者だから」賃金なし… 退職後、裁判で「1500万円」回収した元課長の逆転劇
ジャッジ
裁判所 「会社はXさんに残業代860万円を払え」 会社 「ちょっと待ってください! Xさんは【管理監督者】にあたります。なので残業代を支払う必要はありません」 ▼ 説明 以下の条文です。たしかに【管理監督者】には残業代を払わなくていいんです。 ■ 労働基準法 第41条 この章~で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。 2号 ~監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者 裁判所 「いえ、Xさんは管理監督者じゃありません。管理監督者にあたるかどうかは、3要素すなわち①業務の態様、権限、責任、②労働時間に対する裁量、③待遇などを実質的に見て判断します。その結果、Xさんは管理監督者じゃないと判断しました。順に説明します」 ▼ 業務の態様、権限、責任 ・たしかにXさんは、最重要部門である戦略本部で、会長から指示されたアイデアをもとに戦略を練り、常務と協議して、会長から承認を得たあとは実行フェーズに移すという経営上非常に重要な任務を行っていた。 ・しかし、それは会長の考えを具体化する作業というべきであり、最終的には会長が重要な決定事項を決定していた。 ・Xさんには社員を採用・解雇する権限はなく、人事権限は限定的だった。 ・新規店舗の急拡大により慢性的に人員が不足し、Xさんは店舗業務に追われており、戦略本部の意思を実現するために従業員に指揮命令するというよりは、指揮命令される側である従業員側の労務が中心となっていた。 ▼ 労働時間に対する裁量 ・タイムカードで労働時間を管理されていた。 ・ほとんどの月で100時間を超える残業を余儀なくされている。 ▼ 待遇 ・Xさんの給料は月額42万円/(年収700万円程度)だったが、これは、労働時間の規制を超えて活動することを要請されてもやむを得ないと言えるほどに優遇されていたとは言えない。 ■ 理由 月100時間を超える残業に見合う手当やボーナスが払われてたとは言い難い。管理監督者ではないA店長の給与(最上位の店長は月額33万円)と比較すると、A店長が月100時間の残業をした場合には、45時間分の固定残業代が有効だとしても、残業代が相当程度発生するため、Xさんの月額42万円の給料を楽勝で超えることになる。なので、Xさんが非管理監督者と比べて厚遇されていたとは言えない。 裁判所は、以上のように3要素を吟味した上で「Xさんは管理監督者じゃない」と判断しました。この判断手法は確立されています。 ■ お仕置き 裁判所はお仕置きとしてプラス649万円の支払いも命じています。付加金と呼ばれるものです(労働基準法114条)。裁判所が「残業代の不払いが悪質だなぁ~」と感じれば命じます。金額は裁判官が自由に決めます。今回の金額は裁判所がけっこう怒ってると思います。