映画『青春18×2 君へと続く道』ロケーションはどうやって選んだ? 前田浩子プロデューサーに聞いた
――台湾での撮影環境についてもお聞きしたいです。 前田P:環境が「作られていった」という感じですね。藤井監督は自主映画をやっている頃から台湾に行って、いろいろな人に会ってネットワークを広げていました。その中でPVを作る機会があったときに彼を支えてくれた若いスタッフが、今回の美術デザイナーです。 苦労したのは18年前の台湾を作ること。細かく台湾チームと映像を見ながら18年前になかったものがあれば消していき、ロケ地も古い駅を探すなど工夫していました。 ――台湾と日本の合作として進める中で、違いは感じましたか。 前田P:同じアジア圏ということもあって、どこか通じている部分がある中でスタートを切れたかと思います。その一方で、もちろん日本と台湾の違いも感じました。例えば、日本だと「飯押し」という業界用語があって。撮影時間が押したらご飯を後回しにして撮り続けることですが、台湾だとご飯が優先。朝昼夜で、ご飯が7,8種類も用意されているんですよ。しかも温かい。たぶんグァンハンは日本でロケをしているとき、何でいつもこんな冷たいのって思っていたと思います。福島・只見町のアミの実家を訪ねるシーンは、ロケ地が静かで落ち着いていたのでケータリングを呼びましたが、それは嬉しそうに食べていました。
只見線復活の話を聞いてアミの故郷に
――本作では日本の美しいロケーションも見どころですが、ロケ地はどのように選ばれましたか。 前田P:個人的に参考に見ていたテレビ東京のドラマ『鉄オタ道子、2万キロ』(2022年1月クール)のクレジットで雑誌「旅と鉄道」を見つけ、まずは真柄智充編集長にロケ地のご相談をしました。原作は、青春18切符で旅をする台湾の青年のブログです。それを簡単に訳したものを真柄編集長にお送りし、ご意見とアドバイスをもらって、藤井監督たちと原作のルートを含めて日本でロケハンを開始しました。 その中で只見線のことを知りました。2011年に豪雨で被災していて、廃線の話も出たそうです。そんな中で地元住民から「只見線の美しい景色をなくしたくない」という声が上がり、お金を集めて11年かけて復興した話を聞きました。それが22年10月に開通することを藤井監督に話すと「只見をアミの故郷にしよう」と前のめりになり、そこからルートを考えていきました。 ――実際の只見はどんな町でしたか。 前田P:只見駅にロケハンに行くと、ポツンとした感じがすごくて。無人駅で、改札を出て歩いても何にもないんですよね。駅を出たところにタクシー会社があって、いろいろ案内してもらいましたが「冬はどうですか」「いや、もう雪でちょっと入れないですよ。ここからは」と雪の情報も伺って。そんな地元の方との会話は、アミのセリフにも反映されました。 ――劇中でジミーがたどるルートは、原作とは違うんでしょうか。 前田P:原作は東北の方に行きますが、いろいろ調べてロケハンする中で、台湾の旅のツウがよく行く「昇龍ロード」という中部・北陸地方を南から北に縦断するルートを見つけました。それを藤井監督にプレゼンしたところ「その前にジミーに立ち寄らせたい場所がある」と言われたのが漫画『スラムダンク』の聖地・鎌倉です。ジミーはスラムダンクを見て日本語を覚えて、アミとの会話で盛り上がるきっかけになっていますからね。