図書館なのに「食品をお持ちください」なぜ? 学びを広げる試行錯誤 きっかけは小学生からの相談
「ご家庭の食品をお持ちください」――。 名古屋市守山区の郊外にある志段味図書館はこのところ、こんな告知を重ねています。多くの人が本を借りたり読んだりする公共図書館は、原則、食べ物の持ち込みは禁じている場合がほとんど。なのに食べ物の持ち込みを募るって、どういうことでしょうか。 【画像】全国の図書館、工夫はたくさん…貸出回数ゼロの本フェアも 館長の藤坂康司さん(65)曰く、「フードドライブを続けているんですよ」。
きっかけは、夏休みの子どもたちの相談
フードドライブとは、必要とする人に食品(Food)を寄付するため、家庭で余っている未利用の食品の提供を促す(Drive)活動。先駆けの米国では、郵便配達員でつくる労働組合「全米郵便配達員組合」などが1990年代から、日頃の郵便配達網を生かして家庭の食品を回収し、慈善団体などに届けるフードドライブを続けています。 農林水産省の資料によると、日本では2008年ごろから実施団体が増え、2010年代半ばから急増しているそうです。日本でもSDGsへの関心が高まり、フードロスをなくそうという考えが広がったのも、背景にあるようです。 志段味図書館はこれを2022年から実施するようになりました。 きっかけは、夏休みになるたび、図書館に来る子どもたちから毎日のように、「地域の施設のSDGsの取り組み」についての宿題の相談を受けたことです。「図書館でも何か目に見える取り組みをできれば」と考えた藤坂さんは、同じ守山区でひとり親の支援をしている一般社団法人「つながり探究所(つなしょ)」の中村真由子さんを招いたトークイベントを2022年秋に開催。 参加者を交えて、「自分がやってしまったフードロス」などを話し合い、企業や海外の取り組みなどを学びました。「袋が破れただけで廃棄になるお米もあると聞いて、もったいない、と驚きが広がりました」と藤坂さんは言います。 このトークイベントに合わせて、フードドライブも同時に開催。参加者が家庭から、カップ麺やパン、缶詰、お米などを持ち寄り、段ボール5箱分になったそうです。集まった未利用食品は、「つなしょ」のボランティア活動に寄付しました。