「生きがいくれた」ラグビー 胸から下がまひ、東海大相模アナリスト
17日にあった第104回全国高校ラグビーフットボール大会県予選で、東海大相模は桐蔭学園に敗れ、2大会ぶりの花園出場はかなわなかった。その試合をベンチから車椅子で見守った部員がいた。2年前に練習で大けがをし、胸から下にまひが残る。それでもアナリスト(分析家)として試合に臨み、チームメートと共に涙を流した。 その部員は笹川祐(たすく)さん(3年)。2022年8月、練習試合中にタックルを受けて下敷きになった。頸椎(けいつい)を脱臼骨折し、1年近く入院生活を送った。今も週2回のリハビリを続けている。 それでもラグビーに関わることはやめなかった。高額な治療費がかかるため、チームメートは試合の度に会場で支援金を募ってくれた。笹川さんは「ラグビーを投げ出したいと思ったが、みんなが支えてくれた。今後は自分が恩返ししようと思った」と話す。 23年冬ごろから始めたのは、自チームや相手チームの分析だ。録画された試合を見て、箸が持てない手でペンを握り、「正」の字を書き続けた。エリアごとにプレーの成功率などを算出するためで、矢沢翼主将(3年)は「相手の特徴や動きを教えてくれる。最高のチームメート」と感謝を口にする。 迎えた決勝。笹川さんは「選手と同じ目線の高さで自分も戦いたい」と、立ち上がる機能が付いた電動車椅子に乗って臨んだ。自らインターネットで探し、メーカーから特別に借りたという。 チームは敗れ、高校最後の花園は逃したが、笹川さんは選手たちに拍手を送った。「このチームの存在がなければ、復学もリハビリも頑張れなかった。高校生活に後悔はない。やりきった」 進学する大学でもラグビー部でアナリストを目指す。目標は全国大学選手権優勝で、将来は車椅子利用者や障害者を支える仕事に就きたいと思っている。【田中綾乃】