実は養蜂家!MONKEY MAJIKのMaynard&TAXに『ビーキーパー』を観てもらった「僕らは普通のビーキーパーです(笑)」
アクション映画界のトップランナー、ジェイソン・ステイサムの主演最新作『ビーキーパー』(2025年1月3日公開)。元すご腕エージェントのビーキーパー(養蜂家)が、弱者を食い物にする詐欺グループに怒りの鉄拳を叩き込むハードアクションだ。そんな本作にちなみ、アーティスト活動のかたわら養蜂業も営んでいるという、4人組ロック・バンド、MONKEY MAJIKのMaynard(メイナード・プラント)とTAX(菊池拓哉)がひとあし先に映画を鑑賞!2人の“リアルビーキーパー”だからこそ気づく、人間社会を蜂に例えた脚本のすばらしさなど、意外な注目ポイントから、"普通"のビーキーパーにはできないアクションのすごさまで、本作の魅力を解き明かす。 【写真を見る】養蜂家もほしくなる!?ジェイソン・ステイサムが着用するスタイリッシュな蜂の防護服 静かな郊外で養蜂家を営むアダム・クレイ(ジェイソン・ステイサム)は、かつて社会の均衡を保つため暗躍していた“ビーキーパー”と呼ばれるエージェントだった。ある日、彼が土地を借りていた心優しい女性がフィッシング詐欺に遭い、自ら命を絶ってしまう。怒りに燃えるクレイは詐欺グループに宣戦を布告。しかし組織を率いるデレク(ジョシュ・ハッチャーソン)は政界に強力なパイプを持ち、元FBI長官(ジェレミー・アイアンズ)を顧問に抱える影の大物だった。組織の拠点を次々に襲撃するクレイの前に、現役ビーキーパーやFBIが立ちはだかる。 ■「人間社会を蜂に例えてビーキーパーを据えるという脚本がすばらしい」(Maynard) ――まずは、映画をご覧になった感想をお聞かせください。 TAX「ただのアクション映画ではなく、養蜂家の目線で作ったような要素が入っていておもしろいと感じました」 Maynard「僕たちビーキーパー(養蜂家)は管理人のような存在なので、“ビーキーパー”という組織が裏で国を支える役割を担っているというコンセプトがおもしろかったですね。アクションものとしても楽しい映画になっていました」 TAX「閉塞感のある社会において、間違いなく一気にスカッとした気分にしてくれます。爽快感ある勧善懲悪ものが大好きで、僕たちMONKEY MAJIKの『SAKURA』という曲では東映太秦映画村のセットを使って『遠山の金さん』をモチーフにしたミュージックビデオを作ったくらいですから(笑)」 ――時代劇の「待ってました!」感にも近い、ジェイソン・ステイサムらしい映画でしたね(笑)。キャスト陣はいかがでしたか? Maynard「僕はジェレミー・アイアンズが大好きなんですよ。彼はどんなキャラクターにもすぐなれるカメレオンというか、とても上手な俳優です。いっぽうジェイソンはどんな役でもいい意味でジェイソン・ステイサムだなという雰囲気で、男らしいし観ていて安心できるところが魅力ですね。実は昔ジェイソンに似てると言われたことがあるんですよ。自分としては頭の形ぐらいじゃないかと思うんですけど(笑)」 TAX「今回ジェイソンはアクションだけでなく、シリアスな部分も違和感なく演じていましたね。肉体派というだけでなく、役者さんとしてすばらしいんだなとあらためて感じました」 ――養蜂家目線からの見どころをお聞かせください。 Maynard「蜂たちを世話する養蜂家は、英語でsteward(用度係、執事)に例えられることが多いんです。ただ蜂蜜を採るのではなく蜂たちの世話をするということですね。この映画で描かれているように、私たちの社会は国家という組織のなかに大統領や首相がいて議会があり、たくさんのシステムで守られていますが、それでも国家が揺らぐ事態は起こりますよね。蜂の世界も同じで、完璧なシステムがあっても気候や天候は年ごとに変わるし病気もあるので、養蜂家が彼らを手助けするわけです。人間社会を蜂に例えてビーキーパーを据えるという脚本がすばらしいと思いました。脚本家のアイデアかどうかはわかりませんが、自分で趣味で養蜂しているか親戚にビーキーパーがいる方なんじゃないですかね」 TAX「一説には近代養蜂におけるビーキーパーは聖職者がルーツと言われ、教会に従事する神父さんたちが養蜂をしたのがはじまりだそうで、日本では明治以降に入ってきました。なんかミステリアスですよね、そんなところをストーリーや謎解きに繋げてもおもしろかったかもしれないです。ただ展開がはやいので、もう少し養蜂という面から深堀りしてもらいたかったから、3部作にして続きを作ってもらってもいいんじゃないかと(笑)」 Maynard「養蜂家から見てわかってるな!と感じたのは、ジェイソンが人から土地を借りて養蜂をしていること。養蜂家は農家のように自分の土地を耕すわけではないので、世話になるパトロンのような方がいっぱいいるんです。僕たちも土地や小屋を借りて養蜂し、毎年採れた蜂蜜をプレゼントしています。そのあたりもしっかり描かれていました」 TAX「蜂自体の生き物としての美しさ、採れた蜂蜜の美しさってすごく絵力があるんですよ。そのあたりをアイキャッチにしてほしかったな~」 Maynard「それにしてもジェイソンが着ていた蜂の防護服、フェンシングのユニフォームみたいでかっこよかったですね。欲しくなりました(笑)」 ■「やればやるほど蜂に関わることは人間にとって大切だと感じています」(TAX) ――おふたりはミュージシャンであり、2018年からは地元の宮城県で養蜂家としても活動されていますが、養蜂の魅力とはなんでしょうか? TAX「何十年もやっているわけではないので、毎年いかにして蜂にとってよい環境にしてあげるかという段階ですが、“人々のための活動”と感じられるところです。蜂蜜を採蜜するのも大切ですが、蜂の命をつなぐ部分にこそ役割があるといいますか、やればやるほど蜂に関わることは人間にとって大切だと感じています。ですから人前でお話しさせていただく時は、小さくてもいいので庭に花を植えたりすることで地球は少しずつだけど変わっていますとお伝えしています」 Maynard「最近ある研究の記事を読んでいたら、人間は経験したことの何割かしか脳にインプットされないとありました。つまり大事なことだけを覚えて、あとは忘れてしまうそうです。蜂たちは敏感で、少しでも環境が悪くなると死んでしまうし自分の巣を守ることもできません。だから養蜂家にとって環境作りは重要で、僕もいつも天気を気にするようになりました。養蜂を始めたことで、自分の周りに目を配るようになり、つまり大事なこと、覚えるべきことが増えていると感じます。それは自分や蜂だけでなく、周囲の人たちのためにもなるんじゃないでしょうか。養蜂によって、記憶するデータ量が少ないというボトルネックが広がることも魅力だと思います」 ――おふたりは映画好きだそうですが、映画館で映画を観る楽しみについてお聞かせください。 Maynard「パンデミックのころ、北アメリカでは映画館の時代が終わったと言われましたが、最近のボックスオフィスのデータを見るととんでもない人が映画館に通っています。知らない人たちと一緒に観るという行為は、社会の一員になることですし、1人で家で観るのと感じ方も違ってすごくいいと思います。映画に限らず他人といることで人生がおもしろくなると思っているので、僕は映画館派なんです」 TAX「映画館だとテレビではわからない音が聞こえたり、大きいスクリーンだからこそ見える画がありますよね。映像も音も迫力を得ることができるという意味で僕も映画館が大好きです。そもそも僕が小さいころは座席指定制ではなかったし、映画館に何時間いてもよかったので、同じ映画を繰り返し何度も観たんですよ。いまにして思うと贅沢な経験をしたと思います。劇場の暗闇で観たことのない世界を体験する映画は、子どもにとって最初の記憶じゃないでしょうか。だから自分の3人の子どもたちも、小さい時から映画館に連れていっています。映画館はいちばん身近にあるアトラクションというかスペシャルなものだなと思いますね」 ――最後にこれから『ビーキーパー』を観る人たちにひと言お願いします。 TAX「深く捉えれば地球に生きるものとして大きなメッセージが感じられる作品でありつつ、なにも考えずに楽しめる勧善懲悪ものという二面性のあるすばらしい作品だと思います」 Maynard「そのとおりですね。ビーキーパーとして楽しめる要素もありましたし、ビーキーパーではなくても楽しめる映画になっています。ちなみに僕らは普通のビーキーパーです(笑)」 TAX「日本政府に雇われていません(笑)」 取材・文/神武団四郎