町田のロングスローが批判の的に 短いことの是非も…“世界への武器”となり得るAPT【コラム】
アクチュアル・プレーイングタイムを短くしているとされる町田のロングスロー
今年のJリーグでは「アクチュアル・プレーイングタイム」が話題になった。先日のJリーグ理事会でも野々村芳和チェアマンが言及するなど、この時間の長さについて語られている。 【写真】町田のベンチGKがタオルでボールを拭いて渡す決定的瞬間 「アクチュアル・プレーイングタイム」とは、大雑把に言えば試合時間からプレーしていない時間を引いた長さ。ヨーロッパの主要リーグではおおよそ60分程度だと言われており、Jリーグでは2009年から計測を始め、その当時は平均で55分程度だった。 東京ヴェルディの城福浩監督は2023年の段階でこんな見解を述べていた。 「日本人は身体的にも精神的にも持久力があるので『アクチュアル・プレーイングタイム』が延びれば、世界への武器になると思っています。プレミアリーグは『アクチュアル・プレーイングタイム』が60分程度で、我々もそこを目指しているのです」 このアクチュアル・プレーイングタイムが注目されるようになった発端は、2023年のFC町田ゼルビアのロングスローだった。黒田剛監督が青森山田高の指導者時代に多用していたこのスローインをJリーグに持ち込み、さらに首位を独走したことでロングスローの際にタオルでボールを拭いて投げる動作が目立つようになった。 実はそれまでもいろいろなチームでロングスローの際にタオルを用いていたが、町田によって一気に注目を集めたと言える。町田と同じようにスローインのたびにタオルを拭いていたチームもあったが、町田が積極的に戦力補強を行い、急激に強くなっていたこと、そして、SNSの普及により多くの人がこれを知るようになったことで「アクチュアル・プレーイングタイム」を短くしていると批判を浴びるようになった。 そんな多くの声を集約したのが、同じく城福監督が2023年に語ったこのコメントだと言える。 「天皇杯のFC東京戦では我々もロングスローを1回行いましたが、ロングスローを武器にするチームだと、1回ごとにスロアーが逆サイドまで行ってボールを拭いて、センターバックが上がっていって、と、長いときには40秒ぐらいかかることがあるんです。しかも、コーナーキックと違って10回、20回とあるわけです」 ロングスローが1試合に10回以上あることはめったにないとは思うが、このスローインの時間がサッカーの魅力を削っているという考え方は一理ある。 一方でロングスローをコーナーキックと同じように考えるべきだという意見もある。コーナーキックの時はキッカーが両方のコーナーまで走って行き、ボールをセットして、蹴る前の攻防をレフェリーが監視し、そこからボールが蹴られる。ロングスローも同じようにゴール前に放り込むため、同じようなものだという考え方だ。 どちらの考え方になるかは、ロングスローを重要な武器の一つとして考えるかどうかで分かれるだろう。ただ、どちらにしても、本来、理想なのは、コーナーキックもスローインももっと素早く行われることだろう。