22日、巨人戦の1回、無死二塁から浅野は投前にバントを行う。投手才木

＜虎を深掘り。＞ 　日刊スポーツの随時企画「虎を深掘り。」の第21回は、22日巨人戦（甲子園）の初回に見せた変則ダブルプレーの舞台裏に迫ります。初回にいきなり無死二塁の先制機を招きながら、浅野が試みた送りバントを「投－三－遊－二」で併殺に斬った場面。「1－0」完封勝利につながった好プレーの裏側にあった内野陣の役割を掘り下げました。【取材・構成＝波部俊之介】 　　　◇　　◇　　◇ 　いきなりの大ピンチが、一瞬で追い風に変わった。優勝争いで絶対に負けられなかった22日の巨人戦。甲子園の緊張感は普段以上に高まっていたが、阪神の内野陣は落ち着いていた。 　初回から無死二塁。送りバントを試みた2番浅野の打球は投前に勢いよく転がった。マウンドの才木は迷わず三塁に送球。二、三塁間の挟殺プレーが始まり、三塁佐藤輝から遊撃木浪に渡ってまずは二走丸をタッチアウトに仕留めた。その後、木浪は二塁ベースカバーに入った中野へ即座に送球。進塁を試みた打者走者浅野もアウトにし、変則ゲッツーを完成。2死走者なしと戦況が一変した。 　一連の流れの中で、まず大きかったのが二走を追った佐藤輝のダッシュだ。ボールを受けた瞬間は「ランナーが止まったのが見えた」という。この時、挟殺が長引けば長引くほど、打者走者の二塁進塁にもつながりかねない。全力で追い込んだことで、二走の丸を帰塁アウトに持ち込めた。 　難しいのはボールを送球するタイミングだ。佐藤輝の追い込みで、二塁ベースで待ち構えた木浪は限界まで走者を呼び込めた。受け取って一発で走者をアウトにできる距離まで引き寄せ「ハイっ！」と合図。踏み出しながらボールを受け取りタッチアウト。キャンプから繰り返してきた連係が、ここ一番で生きた。 　木浪　練習でもあんなにうまくいかないぐらいいいプレーだったので。あれはすごくよかった。 　確実に1つのアウトを取ることが最優先。その上で注意すべきは進塁を狙う打者走者だ。藤本内野守備走塁コーチいわく、打者走者が二塁進塁を狙うタイミングは「ショートがサード側、遠い方に追いかける時」。ボールを受け取った木浪にも予感があった。 　木浪　アウトにした後、バッターランナーも来ていると思った。タッチに行ってパッと見たら、やっぱり走ってる残像が見えた。 　読みは的中し、浅野は二塁へ猛進。即座にベースカバーの中野に送球した。 　このとき、中野が二塁に到着したのはギリギリのタイミングだった。無死二塁で犠打警戒の場面。一塁手はチャージをかけるため、二塁手は一塁ベースカバーに入る準備が基本だ。定石通り、一塁方向に向かったが、才木の三塁送球を確認してすぐに切り替えた。 　中野　（送球を受けたのは）ベースに着いた瞬間、もしくは本当にちょっと前くらいだった。捕球して体が流れた状態のタッチだった。ギリギリいけたと思います。 　内野陣それぞれがやるべき動きや判断をこなして完成させたスペシャル併殺。藤本コーチも「一番理想な形でパターン」と振り返った。逆転優勝へ崖っぷちで残り5試合。今回のような冷静な状況判断が、勝負どころで大きな結果につながっていく。