タイムセールに飛びつく人は「本当のお金持ち」になれない…節約好きがホイホイはまる"年末年始の落とし穴"
お金を貯めるにはどうすればいいのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「年末年始は注意が必要だ。節約してお金を貯めようとする人を誘惑する“お得な演出”がたくさん現れる」という――。 【この記事の画像を見る】 ■12月に特殊詐欺が増えるのはなぜか 年末は犯罪が増える時期だと言われている。ボーナス支給や年末年始の物入り用に、手元にお金がある時期という理由だろうが、特殊詐欺の認知件数も12月が最も多いそうだ。デジタル上で金融被害にあうケースでは、少なからず偽メールによるフィッシングが原因になっている。 日本クレジット協会の調査によると、2023年のクレジットカードの不正利用の被害額は540.9億円と過去最高になった。2024年は1~9月時点の数字で392.7億円。その9割が、カード番号を盗まれることによる被害だ。我が家でも、メールを開けば毎日うんざりするほど大量のフィッシングメールが届く。 当然すぐに削除するのだが、ある時にその件名を見ていて気づいた。詐欺メールは、私たちの「損をしたくない、絶対に自分のお金を減らしたくない」という心理を利用して作られているということに。悪質なメールを分析しながら、どんな時に私たちがうっかり警戒ハードルを下げてしまうのか考えてみたい。 ■1円でも節約したい心理が利用される 「人間は得した時の喜びより、損した時の痛みの方を数倍強く感じる」というのが行動経済学の教えだ。典型的なフィッシングメールはまさにそれを利用している。 「不正ログインのお知らせ」「異常なアクセスがありました」と書いたメールが来れば、自分のお金が誰かに脅かされるのだと慌てるし、「あなたのカードがこの支払いに使われました」と覚えのない内容が書いてあればドキッとする。
カードの番号が不正利用され、大事な口座のお金が第三者のために引き落とされてしまうなど耐え難いからだ。もしや本当にカードが使われたのではと、そのままリンクをクリックし、パスワードを入力し――という行動をとってしまうと、相手の思うつぼだ。 さらに、一歩進んで積極的にお金を節約したい人が目を止めるような手口もある。先日、「サブスクリプション料金の改定について」というメールが届いた。12月某日にサブスク料金を値上げするが、解約しない限りは自動更新となりますという。で、解約及び詳細の確認はこちらへ――とリンクに誘導されるわけだ。 自分はそのサービスに加入した記憶はないため詐欺メールだろうと判断したが、「固定費を1円でも節約したい」人なら、つい騙されてしまいそうな巧妙な手口だろう。今年中に使っていないサブスク料金を解約し、お金を浮かせたいと考えるのは正しいけれど、くれぐれもその心理を利用されないように注意したい。 ■ポイ活好きに注意してほしい「もらえます」偽メール 先に書いた通り、これまでのフィッシングは「不正な取引があり、口座を凍結します」等の脅し型がメインだったが、その手口が周知されたせいか、最近はプレゼント型が目立つようになってきた。 目にする件名は「会員様限定 5000円プレゼントキャンペーン」、「年末の大感謝企画」「ログインするだけで300ポイント進呈、いますぐアカウントの確認を」といったものだ。ポイントに興味がある人なら、思わず目を止めてしまいそうだ。メール内のリンクをクリックさせ、IDやパスワードを入力させる手口だろう。脅しはスルー出来ても、ポイントをプレゼントと聞くと、まさか詐欺メールだとは考えない。そういうキャンペーンが世の中にごっそりあふれているからだ。 北風と太陽の逸話ではないが、脅しを続けても、相手は思うような行動を起こさないこともある。それよりも、これはあなたが得する話ですよ、と言われれば振り向いてしまう。ポイ活が浸透し、より効率的にポイントを稼ぎたいと考える人が多くなっているからこそ、この手口が増えているのだろう。 これがフィッシングメールではなく正規のキャンペーン企画であっても、応募のために自分のアカウントや情報を提供している点は変わりない。何かを得るためには、何らかの対価を払っていることは忘れずにいたい。うまい話はどこにもないということに。