「デンクン」はイーサリアムにとって吉と出るか、凶と出るか?
断片化への懸念
ユーザーをより安価なレイヤー2に押しやることは、イーサリアムのエコシステムをより利用しやすくすることにつながる。だが、一部の開発者は、サードパーティーのネットワークを受け入れることが逆効果になり、イーサリアムのエコシステムを分断し、主要ブロックチェーンであるイーサリアムの「決済レイヤー」としての大きなユースケースを希薄化する可能性があると警告している。 「ユーザーをイーサリアムから他のレイヤー2に押しやろうとすることから生じる当然の結果は、汎用コンピューティング用の汎用プラットフォームとしての優位性を手放すことを意味する。他のプロトコルが汎用コンピューティングの責任を果たすべきだと言っているのだから」とキム氏は指摘する。 「レイヤー2はベースレイヤーにサービスを提供するものとされているが、その普及によって、手数料、開発者、流動性などのリソースをめぐってベースレイヤーと競合する可能性がある。トランザクションの大半がレイヤー2で行われるようになれば、バリデーターの手数料が消えてなくなり、レイヤー1を維持する経済的インセンティブが希薄化するかもしれない。さらに、レイヤー2への依存は活動を分断し、イーサリアムのエコシステムの結束と相互運用性を弱める可能性もある」とラインズ氏も懸念する。 12日のインタビューで、ベイコ氏は断片化の懸念を一蹴した。ベイコ氏によれば、開発者の断片化は「バグではなく仕様」だという。「異なる人々が異なるタイプのロールアップを展開し、それを試すことができることは非常に価値がある」とベイコ氏は語った。
ロールアップのセキュリティ
しかし、ロールアップのセキュリティにも懸念がある。 ロールアップはユーザーからのトランザクションを束ね、同じ水準のセキュリティを保証できるようベースチェーンに渡すという形で、究極的にイーサリアムのセキュリティの仕組みを「借用する」ように設計されているのに対し、「レイヤー2にはさまざまな設計があるため、イーサリアムのあらゆるユースケースにアクセスしたいユーザーは、数多くの異なるブロックチェーンのルールセットを信頼する必要があるかもしれない」とライムズ氏は述べた。 すべてのレイヤー2のルールセットが同じように作られているわけではない。何十億ドルもの取引高があるにもかかわらず、現在、最大規模のロールアップはすべて、中央集権型シーケンサーや、ユーザーの信頼に依存する証明システムのような補助的な仕組みを備えている。 このような補助的な仕組みは手数料を抑え、ある種のバグからユーザーを保護することに役立つが、分散化やパーミッションレスといったイーサリアムの主要な価値観からは逸脱している。「今日のロールアップは、さまざまな理由からイーサリアムほど安全ではない。そのあたりを人々に教育することは、コミュニティとしての我々の責任だ」とベイコ氏は語った。 ユーザーが妥協に満ちたレイヤー2ネットワークでの取引に慣れるにつれ、イーサリアムの分散化純粋主義的な売り文句が説得力を失うのではないかという懸念がある。 しかしベイコ氏によれば、より安価なネットワークへのシフトは避けられないもので、イーサリアムは現実に適応しているだけだという。 「市場構造全体がどのように進化すべきかを指示することがイーサリアムの役割だとは思わない。ユーザーにとって選択肢が増えることは喜ばしいことだ」とベイコ氏は語った。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:イーサリアム財団のティム・ベイコ氏|原文:Debating Dencun: Will Ethereum's Big Update Help or Harm the Network?
CoinDesk Japan 編集部