ソニックマニア総括 サカナクション、アンダーワールドら奇才たちの台風を吹き飛ばす熱演
アンダーワールド、長谷川白紙、フェニックス、ヴィクトリア、メジャー・レイザー
【Underworld】22:20~23:40 続いてはMOUNTAIN STAGEのアンダーワールド。今や彼ら2人も60代半ば、流石に老成していてもおかしくない。だが、この日の彼らはそんな様子を微塵も感じさせないステージだった。初っ端は日本でも人気が高い「Two Month Off」の軽快なグルーヴでオーディエンスを引きつけると、その後はひたすらハード&アグレッシブに駆け抜けていく。最近の新曲群はまるで30年若返ったようなダンストラックばかりだということは別記事でも書いたが、そのモードがライブでも通底しているように感じた。ハウシーでロマンティックな「Rez / Cowgirl」をやらず(無論ライブでは定番の人気曲)、その代わりにドラムンベースのフィールを取り入れたアグレッシブな「Pearl’s Girl」のバージョン違い2つを敢えてやってみせたところにも、今の彼らの志向が滲み出ていたように思える。 ラストの「Born Slippy (NUXX)」は予定調和と言われればその通り。だが、今の自分たちのモードを貫きつつ、ファンの要望にも応えるのがビッグアクトの役割。最後は誰もが待ち侘びていたあの荘厳なシンセの祝祭感でMOUNTAIN STAGEを包み込み、圧倒的なカタルシスをフロアにもたらした。(小林) 【長谷川白紙】23:05~23:45 PACIFIC STAGEに「長谷川白紙です。よろしくお願いします」という声が響き、フライング・ロータス率いるレーベル、Brainfeederと契約後初のアルバムとなる『魔法学校』をリリースしたばかりの長谷川白紙が登場。「Uin v1.0.01」からライブをスタート。PACIFIC STAGEを一気にビートの洪水に埋没させる。『魔法学校』のオープニングを飾る「行っちゃった」ではどこか牧歌的なボーカルと硬質なビートが乱れ打ちされるブレイクビーツをマッチングさせ、時空を歪ませる。複数の機材を操りながら、ハンドマイク姿で美しい歌を聞かせたかと思ったら、体をくるくると回転させて踊ったり、アグレッシブに体をよじらせたりと、目と耳を飽きさせないパフォーマンスを展開した。(小松) 【Phoenix】23:20~24:30 アンダーワールドが終わってSONIC STAGEに移動すると、既にフェニックスのライブが始まっている。まず目を引いたのは映像の演出だ。バックスクリーンの外周が前方にせり出していて、サポートのドラムとキーボードはその外周の上で演奏。フェニックスの4人は横一列に並び、せり出したスクリーンの外周より前に立っている。その状態でスクリーンに映像が投射されると、立体的な奥行きを持った映像の中にバンドが半分入り込んでいるように見える。来日直前インタビューでトマが語っていた、最新ライブは「ミニシアターのような体験」というのはこのことを指しているのだろう。しかも1曲ごとに映像のコンセプトが明確に異なるため、まるで短編映画の連続上映を観ているような感覚にもなった。 だがもちろん、素晴らしいのは映像演出だけではない。彼らの演奏は相変わらずシャープでソリッド。音だけを聴けばフレッシュな若手バンドと言われても疑わないくらい、音のエッジが立っている。演奏の間合いにはベテランならではの阿吽の呼吸を感じさせつつも、いつまで経っても変わらずに瑞々しい。こんな絶妙なバランスを保てているバンドは意外と少ないのではないだろうか。セットリストはオールタイムベスト的にキャリアを網羅した内容で、最後はやはり大ヒット曲の「1901」。SONIC STAGEの後方まで「ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ!」の大合唱が巻き起こり、大団円で幕を閉じた。(小林) 【Victoria(Måneskin)】24:10~25:00 息をつく暇もなく、今度はPACIFIC STAGEへと駆け込む。バキバキのテクノを爆音でプレイしているのは、翌日からのサマーソニックでヘッドライナーを務めるマネスキンのベーシスト、ヴィクトリアだ。いわゆるハードテクノは硬派で男性的なイメージもあるが、彼女はそこにバイレファンキも織り交ぜながら、アッパーかつセクシーなセットを聴かせる。DJが好き、パーティが好き、というヴィクトリアの思いが音に乗って届いてくるような楽しさにも好感が持てる。そしてなんと後半にはマネスキンのギタリスト、トーマスがサプライズ登場。ヴィクトリアがプレイするテクノにギターソロを被せるというまさかのコラボを披露し、ソニックマニアならではの贅沢過ぎる共演でファンを歓喜に導いた。(小林)