「世界の鉄道をAIで変革」日立の野望と現実 エヌビディアと連携、保守作業は劇的改善だが導入費用がネック?
■AI活用に懐疑的な声も エヌビディアだけでなく、AI導入などのデジタル投資そのもののコストは無視できない。実は、イノトランスの会場で鉄道業界におけるデジタル化の流れに冷や水を浴びせるような発言があった。それもオフレコではなく、開会式で行われたシーメンス、アルストム、そしてスペインCAFという大手鉄道メーカーのCEOが一同に介したパネルディスカッションでの出来事である。 シーメンスモビリティのマイケル・ペーターCEOは前述のとおりエヌビディアと協業していることもあり、AI活用のメリットを積極的にアピールしていたが、アルストムとCAFはそうでもなかった。
CAFのジャヴィエ・マルティネス・オジナガCEOは「すべてのケースでAIが必要とされているわけではない。AIに何ができ、何ができないのかを見極めなくてはいけない」。アルストムのアンリ・プーパール・ラファルジュCEOも「AIにも電力は必要で、AIが鉄道の電力使用量を最適化したとしても、AIの活用で電力がさらに使われるようなことがあれば納得がいかない」と話した。 我妻氏は「導入コストよりも効果のほうが高くないと誰も買ってくれない」として、効果が高いことを強調する。さらに「カメラなどの機器になるべく汎用品を使ってコストも抑えている」という。しかし、問題は安全に関する鉄道事業者の考え方だ。データ解析に数日かかっても構わないのか、コストが増えてもいいからその日のうちに解析結果を知りたいのか。そこは鉄道事業者の経営体力によっても違ってくるだろう。よもやとは思うが、何をしたいかという理念もなくメーカーの言いなりにデジタル化を進めたら、コスト削減どころか高い買い物になりかねない。
大坂 直樹 :東洋経済 記者