「300人が限界です」経営者が苦悩する〈大規模組織〉のマネジメント問題…解決のカギを握る「ダンバー数」とは?
会社組織が小さいときは社員がうまくまとまるのに、一定の人数を超えると、とたんに統制が取れなくなる…。大規模の人数をうまくまとめていくには、どのような方法があるのでしょうか? ソフトバンクの孫正義社長の下でビジネスの修行を積んだ著者が、孫社長から学んだスキルと合わせて解説します。※本記事は『孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術』(PHPビジネス新書)より一部を抜粋・再編集したものです。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
ベンチャー業界で言われる「社員300人が1つの壁」の意味とは?
記事 『WEB広告の表示回数を2倍にしても「購入者2倍」にはならないワケ…〈限界効用逓減の法則〉とは? 』 で紹介した「限界効用逓減の法則」は、数が増えるほど1単位あたりの効用が減っていくというものでした。 一方、数を増やして一定水準を超えると、効用はむしろマイナスに転じるという「規模の不経済」が働く場合もあります。 例えばベンチャー業界でも、「社員300人が1つの壁」とよく言われます。創業から順調に成長してきた会社も、300人規模を超えた途端、マネジメントが難しくなるからです。 社員が少人数の頃は互いに仲間意識を持ち、同じゴールを目指して高いモチベーションを維持しながら働くことができます。だから放っておいても、組織は勝手に成長していきます。 ところが社員が300人を超えると、お互いの顔や名前を知らない社員が増え、会社としての一体感が失われ始めます。社内の意思の疎通もスムーズにいかなくなり、業務にも様々な問題が生じ始めます。 そこで組織がバラバラにならないよう、これまでとは違うマネジメント手法に切り替えることができるか。それが、300人を超えても会社を拡大できるかどうかの壁になるのです。 このように、「数が増えたことにより、かえってマイナスの状況が生じる」という場面は、ビジネスにおいて珍しくありません。 これは単なる経験則ではなく、理論的にも裏づけされています。 その理論が、「ダンバー数」です。これは英国の人類学者であるロビン・ダンバー氏が提唱した仮説です。彼が「安定した集団を維持できる個体数には上限がある」と主張したことにより、その上限値を「ダンバー数」と呼ぶようになりました。 ダンバー氏によれば、人間の場合、安定した人間関係を保てる限界は「平均で150人(100人から230人の間)」としています。これは皆さんも、感覚的に納得がいく数字ではないでしょうか。 小学校や中学校でも、1クラス30人として、5クラスくらいなら学年全員の顔と名前を覚えられるでしょう。しかし、8クラスや9クラスになると、学年全員を認識するのは困難になります。 私が知る某ベンチャー企業でも、社員が150人を超えた頃から組織内のまとまりが明らかに低下してしまったため、今では全社員を集めるイベントを定期的に開催し、お互いのコミュニケーション促進を図っているそうです。 最初に話した「ベンチャー企業の300人限界説」とは人数に多少のズレはありますが、いずれにしても「集団の上限値」が存在するのは間違いないと考えていいでしょう。