証券口座もマイナンバー提示義務付け 周知進まず戸惑いも
国民にとっての利便性を高める議論が必要
大和総研金融調査部の是枝俊悟研究員は、「マイナンバーだけで個人情報のすべてを引き出せるシステムにはなっておらず、税務当局などがこの情報だけで何かができるわけではない」と指摘した上で、「仮に住所変更や結婚などで性が変わった場合、こうした情報の変更が遅れた場合でも、マイナンバーが提出されていれば税務当局にとって申告漏れなどを把握しやすくなる」などと利点を挙げました。 一方で、「現状は投資家にとってマイナンバー導入によるメリットはなく、今後、マイナンバーを活用して個人投資家などの利便性を高める議論が必要だ。現在のところ、投資家は複数の証券会社に口座を持っている場合、損益通算するためには確定申告をする必要があるが、マイナンバーを使えば税務当局が各口座の情報を合算でき、投資家の手間は減らせるはず」と話しています。 マイナンバーについては2018年から預金者に対して銀行への登録を求めることも始まります。こちらは今のところ任意で、義務ではありませんが、今後国会では2021年をめどに預金口座についてもマイナンバー提出の義務化を議論していくといわれています。 マイナンバーで預金口座をひも付けできれば、財産を隠して生活保護を受給していないかなど不正をチェックしやすくなるほか、銀行などが破たんした場合、同名義人が複数の支店などに預金している額を合算する「名寄せ」などもスムーズに進むという面がありますが、国による国民の資産管理強化につながるという声も出ています。是枝研究員は「預金口座へのマイナンバー導入義務化は金融機関の事務負担も大きく、何より生活に身近な問題であり、無風で進んでいくことは考えにくい。金融所得課税の一体化への活用など、証券口座と同様に個人にどのような利便性があるのか具体的に示す議論が求められる」と見ています。