理想はあれど、目の前のリアルに向き合う。磐田のJ1残留プラン。勝利にしがみついていくような残り9試合に
“残留”という目標にチームのベクトルが定まった
昨年は就任1年目で磐田をJ1復帰に導いた横内監督は、これまで自陣からのビルドアップをベースに、全体を押し上げて攻め込むスタイルを掲げていた。しかし、二巡目になってもなかなか主導権を握れない状況で、ジャーメインなどFWに素早くボールを当てて、セカンドボールを高い位置で拾って仕掛ける速攻は十分に通用していた。 またボールを奪った時に、相手のサイドバックが上がっていれば、オープンスペースをサイドハーフやサイドバックが活用して、クロスからのチャンスに持ち込める。課題である後ろからのつなぎにこだわって危険な位置でのボールロストを増やすより、自分たちの今あるストロングを活かしていく方が、効率的に勝機を高めることができる。 「残り10試合になって今の順位にいるというのは、その1試合の重みが、さらに増してくるので。そういう意味じゃ、我々にとってはトーナメントで、目の前の試合に全てかけていくしかない」 柏戦を前に、横内監督はそう語っていた。当初からなるべく早く“勝点40”に到達すること目ざして、チームを構築しながら、一つひとつ勝点を積み上げていく姿勢を変えなかった横内監督。この3週間のインターバルが明けて“残留”という目標にチームのベクトルが定まったことは、監督や選手の言動からも読み取れるようになってきた。どれだけ理想を掲げても、降格してしまっては元も子もない。 柏戦は相手がハイプレスで、磐田としてはボールを細かく動かすリスクがあること、最終ラインの背後に狙うべきスペースがあることなどを考えても、ロングボールを2トップに当てて、セカンドボールから素早くボールを運んでいく戦術はマッチしていた。 相手が変われば戦術プランも変わるはずで、毎試合、何としても勝点を掴み取っていくこだわりを見せた戦いになっていくと予想される。ガンバ大阪、サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸といった一巡目の対戦で完敗しているチームとの対戦も残るなかで、“弱者の戦術”という言葉が相応しいか分からないが、相手との力関係、強みと弱みなどのリアルに向き合って行く必要がある。 磐田は29試合を戦って勝点31。そのままのペースで38試合に換算すると勝点41となるが、下位の結果によっては残留ラインが引き上がる可能性もある。そうしたなかで磐田は上位との対戦も残すだけに、次の9試合未勝利が続くアビスパ福岡との一戦は大きな意味を持つ試合となるだろう。 「結果が全てになってくると思うので。その結果に対して、自分たちがどう行動できるかだと思うし、(内容的には)やられたけど勝ったから良かったよね、という試合がこれから出てくるかもしれない」と中村が語るように、勝利にしがみついていくような残り9試合になっていくはずだ。 取材・文●河治良幸