「地元に”貢献”したいと思う人を増やしたい」人口減少に立ち向かう『社会人2年目の社内起業家』のチャレンジ
人口減少に負けず、地元を盛り上げたいという思いでUターンし、社内起業家として次世代の地域の担い手育成に取り組む若者がいる。2000年高知県高知市生まれの小﨑百葉さんだ。 【写真5枚】社会人2年目小﨑さんのチャレンジ
学生時代に出会ったまちづくり
土佐女子中学高等学校を卒業後、兵庫県の大学で4年間学んだ。当時は、インテリアデザインなど建築の勉強をしていたが、先生の勧めで建築と深い関連のあるまちづくりについて勉強するようになったことが大きな転機となった。 「まちづくりの勉強では、フィールドワーク型の授業が多く面白かったですね。例えば、実際に団地に行って、団地の抱える課題や現状についてヒアリングをします。それを踏まえて調査を深め、課題解決に向けて実際の取り組みまで行います。そうした経験を積む中で、漠然と将来の進路としてまちづくりに関わりたいという思いが強くなりました」
思いが強くなり、Uターンを決意
就職活動に取り組む中で、その思いはより強くなっていったという。そして、実際にまちづくりをするなら、自分が生まれ育った故郷である高知県に貢献したいと思い、Uターンすることを決意、高知市にあるミタニ建設工業へ就職した。 「まちづくりをかなり推進している会社という点を魅力に感じました。ミタニ建設工業は土木・舗装・建築を三本柱とした総合建設業の会社です。しかし、激動の現代において現状維持は退化していくだけで進化はないという考えから、喫緊の課題である若者の人口流出に対してアクションを起こすことにしました。高知県の担い手となる子どもたちを育てていこう、地域貢献・地域づくりに積極的に関わろうという会社の考えに共感しました」 入社した小﨑さんは企画開発部に配属され、まさに新規事業である高知の担い手となる子どもたちを育てる事業を行うことになった。まだなにも決まっていない中での手探り状態。メンバーと議論をする中で、地元商店街に目をつけた。
こども編集部プロジェクト
「企画開発部では、ミタニビレッジという子ども向けの体験学習の場を作る構想をしています。そして今回、まちづくりの拠点にも、多世代交流のきっかけにもなるであろう商店街という存在に着目しました」 名付けて「こども編集部プロジェクト」 夏休み期間に、小学校5年生から中学校3年生の子どもたち10人が、高知市の中心商店街のガイドブック「トキメクBook」を制作するという内容だ。子どもたちが気になるお店や品物について、自ら取材や撮影を行い、PCで編集も行うという。 「このアイデアを商店街の皆さんにお持ちしたところ、大変喜ばれました。これまで、大人が作るガイドブックはあったけど、子どもたちの視点が商店街に入るのはとてもいいね、と言っていただきました」 取材や撮影・編集といった一連の活動も、その道のプロから子どもたちが教わりながら実践する。10人の子どもたちは、まずそれぞれの実際の仕事の話を聞いた上で、興味を持った内容の役割に取り組む。地域のことを知るきっかけだけではなく、実際に役割を果たしたり、商店街の方々を取材したりする中で、大人たちの仕事について身近に触れ、理解するキャリア教育の機会にもなっているのがこのプログラムの特徴だ。 「このような機会を通して、高知という地域に愛着を持ち、高知で働くことに興味を持つ子どもたちを増やしていきたいと思います。そうして、高知に残りたい、高知に帰ってきたい、高知に貢献したいと思う次世代を育成していきたいと思います」 ガイドブックを無料配布するための資金を集めたクラウドファンディングでは200万円以上が集まり、地域の中で共感の輪が広がっていることを小﨑さんは強く感じているという。自らが会社を設立する起業家ではないが、会社の中で新しい事業を興し、社会課題を解決する「社内・社会起業家」として、社会人2年目にして注目を集めつつある小﨑さん。
今後のビジョン
「個人としては、ミタニ建設工業という看板だけでなく、小﨑さんだからと信頼されるような人物になりたいと思います。また、このプロジェクトはガイドブックを作って終わりではありません。県内外の方々がこのガイドブックを手に取って、心がときめくコンテンツに出会えるような存在にしたいと思います。そうして、世代に関係なく、高知に貢献したいと思う人を増やしていきたいと思います」 現在は、こども編集部プロジェクトに参加したい小中学生を募集中という。高知の商店街でこの夏生まれる多世代の化学反応が楽しみだ。
谷村一成