所要時間は短いけれど魅力が凝縮! “お買い得”な秋の絶景ルート、白池と戸倉山【新潟県糸魚川市】
■遮るもののないパノラマ展望台! 戸倉山山頂へ
差し込む秋の光にブナの森が黄金色に染まる中、のんびりと歩いていきました。2日前にまとまって降った雨も乾き出しており、落ち葉のトレイルはカサカサと音を立てて歩を進める足への衝撃を優しく受け止めてくれます。 やがて狭い尾根となり、傾斜が急になっていきます。じわじわと汗ばむような坂道は、このルート一番の頑張りどころでしょう。やがて頭上が開けてくると、もう少しで山頂です。 すでに風も収まり、質素な山頂標識と三角点だけの戸倉山の頂には数組の登山者が日向ぼっこをするようにのんびりと腰を下ろしていました。まるで、そこだけ刈り払われたように視界を遮るもののない展望台です。浮かれた賑わいはなく、落ち着いてそれぞれが噛み締めるように景色を楽しんでいるようでした。海谷山塊や雨飾山、いまだに冠雪していない北アルプス北部の山稜を眺めます。すぐそこには日本海が穏やかな表情をして空に溶け込んでいました。
■登山道だけじゃないので、道選びは慎重に
登りが急だった分、当然下りは慎重に足を運んでいきます。三連休の最終日、絶好の登山日和とあって多くの登山者とすれ違いましたが、前後に近づく登山者の存在に気づくのが早く譲り合いがスムーズでした。マイナーな山に訪れるだけあって、歩き慣れた人が多いのでしょう。 再び「諏訪社の祠」から見下ろす白池は、神秘的なエメラルドグリーンと澄んだ青空を写すコバルトブルーが入り混じり、往路では陰だった畔の森にも光がすっかり届くようになっていました。 昨今、夏場は暑さに辟易することも多いですが、秋の低山歩きは快適そのものです。晴れた日は明るくカラフルな山道ですが、曇りや雨の日も落ち着いた雰囲気が漂っていて乙なものです。白池周辺の標高なら、紅葉の見頃はまだしばらく続きそうです。池を周回する遊歩道もありますので、ブナの森を歩くだけでも気持ちいいです。 帰りは白池を周回する遊歩道を辿りました。遊歩道や古道、作業道など登山道以外のトレイルや踏み跡があります。落ち葉が林床を覆うこの季節は、やや不明瞭なところも増えていきます。とくに下山時は疲労や焦りから違う道に引き込まれやすいので、不安を感じたら地図(地形図やGPS、スマホアプリ)などで確認する心の余裕が大切ですね。 取材日、2024年11月4日の休憩・撮影を含めた所要時間:約2時間50分 登り:しろ池の森の駐車場~(40分)白池~(20分)角間池~(30分)戸倉山山頂(15分滞在) 下り:戸倉山山頂~(20分)角間池~(15分)白池~(30分)しろ池の森の駐車場 杉村 航(すぎむら わたる) 山岳フォトグラファー。 1974年生まれ。兵庫県育ちの長野県在住。 沢に薮山、山スキー、道なき道をいく山旅が好き。 ライフワークはトラウトフィッシング。美しいヤマメや イワナを求めて、全国の渓流に足しげく通う日々。 小谷村山案内人組合所属、北アルプス北部遭対協。 全日本釣り団体協議会公認・フィッシングインストラクター
杉村 航