決裂した「NPT」再検討会議 核廃絶への展望は悲観的なの?
4月27日から5月22日まで、核不拡散条約(正式名称は「核兵器不拡散条約」。英語ではNon-proliferation of Nuclear Weapons Treaty 、略してNPT)の再検討会議が米ニューヨークの国連本部で開催されました。 ニュースでよく見る核不拡散条約(NPT)って何? この条約は、元来、核の廃絶がなかなか実現しないので、それは継続案件としつつ、直ちに必要な措置として核兵器の拡散を防止することおよび核の平和利用を確保することを目的に作られたもので、1970年に発効して以来、5年ごとに運用状況が再検討されてきました。今回は第9回目の再検討会議でした。
中東の「非核化構想」で対立
会議では、これまでの再検討会議と同様、4週間もの時間をかけて議論されましたが、結局、議論の結果をまとめた「最終文書」を採択できず、会議は「決裂した」と言われる状態で終了しました。直接の原因は、中東を核のない地域にしようという構想について西側とイスラエル以外の中東諸国が鋭く対立したためでした。 核兵器を廃絶する方法として、グローバルなものと地域的なものがあり、前者は特定の地域ではなく世界の核兵器をなくそうとする、いわば普通の方法であり、後者は、比較的容易な地域から始めて核兵器のない地域を広げていこうとする方法です。 現在、このような地域限定的な非核兵器地帯はラテン・アメリカに成立しています。中東も核のない地域にしようというのが「中東非核地帯構想」で、今回の再検討会議では一つの目玉として期待されていましたが、結局イスラエルと他の中東諸国の対立という根本問題は会議が終わるまで解消されませんでした。
米ロが左右する核軍縮の動向
また、今回の会議はグローバルな方法による核軍縮についても前進できませんでした。核兵器の2大保有国である米ロ両国は、ソ連邦時代の1972年に「戦略兵器制限交渉」で合意して以来数回にわたって核兵器の削減交渉を行なって来ました。このように2国間の交渉で核軍縮を進めることは今後も行うようですが、NPTの再検討会議で核兵器の削減、廃絶をせっつかれるのは両国とも好みません。これがNPTで核軍縮が進まない根本原因です。 現在、世界には約1.6万発の核兵器が存在していると推定されています。冷戦の厳しい時には米ソ両国が合計6万発を超える核兵器を保有していたのと比べるとかなり減少したと言えますが、冷戦が終わった現在もなおこのように大量の核兵器を保有する理由はないとして批判する見方もあります。 このような立場、見解の相違は今回の再検討会議でも解消されませんでした。また、北朝鮮の核開発などの核不拡散問題、核セキュリティなど核の平和利用問題でも何ら進展は得られませんでした。