決裂した「NPT」再検討会議 核廃絶への展望は悲観的なの?
被爆地訪問を提案した日本
日本は、今回の再検討会議で、「世界の政治指導者や若者らに被爆地・広島、長崎を訪問すること」を促す提案を行ないました。これは、世界各国の指導者に被爆地で核兵器の恐ろしさ、非人道性を直接理解してもらうことを目的とした提案です。日本人と違って、世界には核兵器が非人道的であることを理解していない人たちがいるのが現実であり、言葉で説明することも必要ですが、被爆地訪問はどんなに雄弁な言葉より核兵器の非人道性を訴える力となるでしょう。この日本提案に中国は強硬に反対しましたが、かなりの数の国が賛同してくれました。会議の結論とはなりませんでしたが、核の非人道性に関する認識を深めるのに重要な一歩となったと思われます。 再検討会議が決裂して終わったことはまことに残念ですが、決裂したこと自体は驚くべきことでありません。実は、過去の再検討会議も2回に1回くらいは似通った状況でした。つまり、最終文書は採択されないまま終わったのです。 今後が大事です。特効薬はありませんが、核保有国も非核保有国も核の廃絶に向けあらゆる努力を継続し、また工夫を重ねていくことが肝要です。 (美根慶樹/平和外交研究所)
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹