【オリックス】戦力外のどん底からはい上がって勝利投手に…井口和朋が心に染みる2年ぶり勝利
<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム> 戦力外のどん底からはい上がって勝利投手に…。こんなストーリーは、50歳目前の中年記者の心に染みる。オリックス井口和朋投手(30)のことだ。19日の楽天戦で自身2年ぶり勝利。延長10回を3者凡退で抑え、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。前回の白星時は、まだ日本ハムの一員だった。 仕事人の雰囲気を漂わせる。飾らない言葉がいい。ヒーローインタビューで言った。 「毎試合、今日が最後のつもりで投げている。今日も1球1球死ぬ気で投げました」 まさに1球入魂の精神。絶対に悔いを残さないとの気迫で、打者を抑え込んだ。お立ち台は日本ハムで初勝利を挙げた18年以来。札幌ドームから、京セラドーム大阪へと景色が変わった。周りを眺めながら、記憶がよみがえってきた。 「うれしかったですし、去年クビになってから今までのことを思い返していた。心配してくれる人、応援してくれる人がいっぱいいました。両親は何も言わず背中を押してくれた。そのために頑張って投げている部分もある。1試合でも多く投げて、1試合でも多く見てもらえたらいいなと思います」 日本ハムから昨オフ戦力外通告を受け、オリックスに拾ってもらった。育成契約から開幕直前に支配下登録。走者を出した他の投手の“尻拭い”から役割をスタートさせ、コツコツと信頼を勝ち取った。7試合連続無失点の先に「ご褒美」が待っていた。 この新天地初勝利が登板11試合目。それまでの10試合はすべて、結果的にチームの負け試合だった。初登板は無死満塁から。その他も僅差ビハインドの走者が残った厳しい場面でマウンドへ上がった。相手に傾きそうな流れを、ことごとく食い止めてきた。中嶋監督からの「おめでとう」と白星を祝う言葉が、素直にうれしかった。 「普通に野球に関係ない会話とかもしてくださります。3イニングとか投げて上がり(ベンチ外)の日に『また上がんのかい』と(冗談で)いつも言ってくださるんで。そういうふうに話しかけてくれるのも、僕なんかのことを気にかけてくれていると思うとうれしいし、頑張りたいなと思います」 井口には、ある目標がある。 「ヤクルトの塩見と対戦したいんですよね。日本ハムの時も、2軍でも対戦したことがないので」 神奈川・武相高の同期。ただ塩見は先日、左膝に大けがを負い、長期離脱の見込みとなった。井口は「能力が高いから、無理してケガしてしまうことがあるんですよね…」と残念がった。今月末にスタートする交流戦での対戦は絶望的。早くても今年の日本シリーズか、来年以降の交流戦でしか可能がなくなった。実現できる日まで、どの試合でも、どんな状況でも、懸命に腕を振る。【オリックス担当=大池和幸】