現地調査なしでニホンジカの数を数える新技術とは
THE PAGE
数が増えすぎて生態系を圧迫しているとされるニホンジカについて、富士通研究所が今年1月から、現地調査を行わなくても生息数を予測できる技術を開発、実証実験を開始した。将来は、他の動物にも応用範囲を広げて、生物多様性の保全に貢献したい考えだ。
生息可能な土地の面積÷1頭の生息に必要な面積
ニホンジカについては近年、急激に生息数が増加するとともに生息域が拡大。希少な高山植物や苗木の食害などが問題となっていることから、国は2015年5月施行の改正鳥獣法に基づいて、2023年までにニホンジカの個体数を半減させることを目標に掲げる。 個体数を減らすなどの対策を施すには、生息数の推定が必要とされる。現状では、現地でサンプリング調査を通じて推定しているが、急峻な崖など立ち入ることが難しいところの推計は困難という課題があった。また、調査する地域を広げると調査員の人数も期間も増えてしまうため、費用などの関係上、対象地域の拡大には限度がある。 富士通研究所が開発したのは、ニホンジカが「生息可能な土地の面積」を、体重から試算した「1頭の生息に必要な面積」で割ることで、その土地で生息可能な個体数を予測する技術。 植生・土地の用途・地形図といった各種情報をもとに、調査場所を、(1)ニホンジカの生息に適した生息地(広葉樹がありエサとなる下草が豊富な土地など)、(2)適さない非生息地(市街地やゴルフ場など)、(3)生息に適さないが移動には使える通路(針葉樹林など)の3種類に区分。このうち、「通路でつながった生息地」の合計面積を「生息可能な土地の面積」とみなし、「1頭の生息に必要な面積」で割って生息可能数を求める。 「この技術は、生物多様性の保全に生かすことを狙ったものです。ニホンジカに限らず、さまざまな動物の生息可能数を予測する技術として開発を進めています」と語るのは、研究を担当する富士通研 R&D戦略本部 環境科学技術プロジェクト 専任研究員の尾崎光男氏。