「男子トイレだけ扉なし」「性教育は男女別」そこに潜む“隠れたカリキュラム”…京大生が経験した学校のジェンダー
生まれという初期条件によってもたらされる「教育格差」。ここにスポットライトを当てた京都大1年生の授業が、2024年度前期に開かれた。高校までの日常・学校生活を振り返り、そこに潜む教育格差の存在に気づくことで、京大生たちは何を学んだか。今回のお題は“ジェンダー”。学生たちのディスカッションを「実況中継」風に紹介する。 【写真】性教育を男女別にする合理性は?…京大生たちがディスカッションした授業の実際の様子 <第1回>なぜ、親が大卒だと子も大卒に? 京大生が教育格差を考えた…「3DS買ってもらえなかった」にみる階層再生産の子育て <第2回>「どの高校に行くか」は、実は「生まれ」が決めている…“特殊すぎる”京大生「高校あるある」から教育格差を考えた <第3回>「学歴はあなたを守ってくれるよ」京大生が受けた進路指導での“洗脳”、成績上げた学生と違和感抱いた学生と… <第4回>「給与がよくなる」から大学進学? 大卒なら高卒の1.4倍…京大生が考えた、進路指導に金銭的利益を用いることの功罪 (岡邊 健:京都大学大学院教育学研究科教授) ■ 「中学校の校長は男性」が9割の日本、5割前後の欧米 第3講の予習範囲は、教科書『現場で使える教育社会学──教職のための「教育格差」入門』の11章である。まず、その内容を簡単に紹介する。 「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業、「女性は気配りができる」といった固定観念は、ジェンダーによって生み出されている。ジェンダーとは、人間を男か女かに分かつ社会的なルールのことだ。 私たちは生まれた瞬間から、ジェンダー・メッセージを浴び続ける。そして、学校でも知らず知らずの間にジェンダーを学ぶ。「女子はダンス、男子は武道」のようにカリキュラムとして顕在化しているものもあるが、大多数は「隠れたカリキュラム」(連載第2回参照)である。 たとえば、日本では9割以上の中学校で、校長は男性だ。しかし、TALISという国際比較調査(2018年実施)によれば、EU加盟国の平均では5割弱、アメリカでは5割強。日本は、飛び抜けて男性の割合が高い。 こうした状況から子どもたちは、「管理的な立場には男性が就く」というメッセージを「隠れたカリキュラム」として学んでしまう可能性がある。 ■ 京大生は“ジェンダー”をどう考える? では、さっそく学生たちのディスカッションの様子を紹介しよう。第3講のお題はふたつあったが、まずは、ひとつめから。 (A)皆さんが経験してきた、または身に付けてきたジェンダーを書き出してください。制度や環境だけでなく、教師や児童生徒・学生どうしの関係性にも注目してください。そのうえで、ジェンダーによって生み出される「問題」に焦点を当てて、教育関係者がこれに、どのように取り組むのがよいかを論じてください。