タタとPSMCが新工場 注目集まるインドの半導体市場
高成長を続けるインドの製造業
インドの電子機器製造業はここ数年、さまざまな取り組みや改革によって大きな変貌を遂げてきた。インド政府はエレクトロニクス製造を促進するためにいくつかのイニシアチブをとっている。2014年に開始された政府の 「Make in India 」は、インドを世界の設計・製造のハブにすることを目的とし、国内の製造業を増やし、輸入とサービス部門への依存を減らすことにある。 それらの後押しを受け、電子機器製造業は高成長を続けている。具体的には、電子製品の国内生産は、2017~18年の3.88兆ルピー(600億ドル)から2022~23年には8.25兆ルピー(1020億ドル)へと大幅に増加。年平均成長率(CAGR)16.28%で成長している。成長の大きな要因は、大規模な国内市場、熟練した人材の確保、低コストの労働力である。輸出も増えており、FY17~18からFY22~23までの輸入のCAGRは12.7%、FY17~18からFY22~23までの輸出のCAGRは35.7%であった。 インドの製造業は急成長を遂げ、輸出も拡大しているものの、現在のエコシステムの下では、今後も大きな成長を続けられるかは不透明だ。インドがハイテク分野で設計・製造(ESDM)の世界的ハブになるためには、国際競争に打ち勝つための能力拡大を奨励・促進し、半導体を含む中核部品を開発する必要がある。 インドは、半導体デバイスを製造するウエハーファブを除けば、電子部品や基板実装に関わるエコシステムにおいて存在感を増している。インドが半導体のウエハーファブを持つことで、施設が必要とする排水処理や産業ガスなどの市場が生まれる。次に、組み立て、テスト、マーキング、パッケージング(ATMP)などに関わる企業の集積が進めば、半導体製造装置を供給し保守・メンテナンスを行うサービス企業の市場が形成される。 今回、半導体製造のサプライチェーンが完成すれば、さらに大きなエコシステムのための市場が生み出されることになる。プリント配線板、コネクター、ワイヤハーネス、サブアッセンブリーなどのメーカーが、今まで以上にインドに進出する可能性が高まる。こうして、コンピューター、携帯電話、セットトップボックスなどの最終製品を製造する企業が、インドに生産拠点を構え、成長することになる。 このような背景もあり、タタによる今回の投資は、インドのエコシステムに拍車をかける。半導体のみならず、電子部品メーカーや完成品メーカーを引き込むことで、サプライチェーンをさらに太くするだろう。
インド政府による投資案件承認はさらに拡大
タタ以外にも、政府はいくつかの投資案件を承認している。これには、マイクロン・テクノロジ ー社が2023年に約2300億ルピーを投資してインドにATMP施設を設立する提案も含まれる。インド政府はまた、2024年2月にCG Power and Industrial Solutions Limitedが約760億ルピーを投じてインドにOSAT施設を設立する提案を承認した。この施設はルネサス エレクトロニクスとの合弁事業である。 さらに、政府は11の新興企業や企業、25の半導体設計企業からの提案も承認した。今後も大きな成長が期待されるインド。半導体関連での動きも活発であり、今後も目が離せない。
電波新聞社