教員匿名座談会、土佐兄弟・卓也が聞く日本のイマイチな「キャリア教育」の理由は「教員任せだから」
学校を取り巻く人を通じて、学校のあり方を考える本連載。社会人、学者、未来の教員、保護者、学校に通えなかった人―― 彼らの声は、学校の「中」に新しい風を吹き込めるだろうか? 第7回は、お笑いコンビ「土佐兄弟」の兄・卓也さんと、キャリア教育を担当する教員3名との座談会を実施。2004年から小・中・高校でスタートしたキャリア教育だが、私立の進学校の現場ではどのように推進されているのだろうか。会社員からお笑い芸人にキャリアを振り切った卓也さんが、私立中高におけるキャリア教育の中身と、その意義について、教員と熱く語り合った。 【画像】土佐兄弟・卓也と座談会に参加した3名の独特な経歴を持つ匿名教員 A先生:私立中高一貫校教員、元大手人材系企業勤務・国家資格キャリアコンサルタントを保有 B先生:私立中高一貫校教員、国家資格の専門職、大学教員と教員を兼業中 C先生:私立中高一貫校教員、民間企業正社員と教員を兼業中
「キャリア教育」の取り組み方は学校や教員に丸投げ状態
土佐兄弟・卓也(以下、卓也):今日はお集まりいただきありがとうございます! 僕は学校でキャリア教育を受けたことがないのですが、小学生と幼稚園生の娘の将来を案じている父親として、とても興味があります。いろいろと教えてください! 皆さんはどんな経緯でキャリア教育を担当されることになったんですか? A先生:私はキャリア教育の授業を統括する立場で、現在の学校に転任しました。学校側は将来社会で活躍する人材育成を目指し、キャリア教育を打ち出す狙いがあり、民間企業で人材マネジメントやキャリアカウンセリングの経験を積んできた私に声がかかりました。 卓也:A先生はキャリア教育専門の教員ということですよね? 僕の中学高校時代にはそんな先生いなかったですよ。B先生、C先生はいかがですか? B先生:私は自発的にキャリア教育担当になったというよりは、任された形ですね。私自身が教員以外のキャリアを歩んできたこともあり、実社会で役立つことを伝えられるはずだ、と期待されたのだろうと思っています。 C先生:B先生と同じく、学校側から依頼されて担当しています。私は民間企業にも籍を置く「兼務教員」なので、キャリア教育に適していると判断されたようです。 卓也:皆さん、学校以外の職場で働いた経験をお持ちなんですね。そもそもキャリア教育って何をしているんですか? A先生:文部科学省の定義では、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」とされています。具体的には、職場体験やインターンシップ、総合的な学習の時間を使った教育活動など、学校ごとに内容や濃度はさまざまです。 卓也:へー! 他の教科みたいに、一律の内容を学ぶわけではないんですね。 B先生:A先生のようにキャリア教育専任の教員がいる学校は、私立学校の進学校でもしっかりカリキュラムを作成していると思いますが、うちの学校は正直そこまで力を入れていません。キャリア教育を担当する教員のチームはありますが、進路指導の一環にとどまっていますね。私としては、もっと有識者や民間企業で働いている人に協力してもらって、生徒に有意義なキャリア教育を模索したい気持ちがあります。 C先生:私は担当科目の授業の時間を使って、ビジネスパーソンや親としての人生の歩みやキャリア観を、少しずつ伝えるようにしています。