「単なる停戦には応じない」元駐日ロシア大使が明かす、プーチン大統領の「本音と猜疑心」
“西側”ロシア情報の偏り
アメリカのトランプ次期大統領がウクライナ戦争の停戦に向けて動き出している。 トランプ氏は以前から「自分が大統領になればこの戦争を24時間で終わらせる」と言っていたが、大統領選に勝利したあともその姿勢に変化はなく、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領に停戦交渉をするように呼びかけている。 【地図】これはヤバい…プーチンの核ミサイル攻撃で狙われる「日本の大都市」の名前 これに対して、日本のメディアや政界からは戸惑いの声があがっている。 ロシアが軍事侵攻を始めて以来、アメリカをはじめ西側諸国はロシアを厳しく批判し、制裁を加える一方、ウクライナを経済的・軍事的に支援してきた。日本も足並みをそろえ、ロシアに制裁をかけてきた。それと真逆のことをアメリカの次期大統領が主張しているわけだから、当惑するのも無理はない。 しかし、トランプ氏の提案は、ウクライナの現状を踏まえれば現実的なものである。西側の厳しい制裁にもかかわらず、ロシアは戦争を有利に進めており、最近はさらに勢いを増している。ロシアを軍事的に打ち負かすというのは、現実離れした発想と言わざるを得ない。戦争をとめるためには、ロシアと停戦交渉をするしかないのだ。 その際に重要なことは、ロシアの主張に耳を傾け、彼らが何を考え、何を求めているかを知ることである。ロシアの要求をある程度受け入れなければ、ロシアが停戦に応じることはないからだ。 しかしこの間、西側諸国はプーチン大統領の主張をプロパガンダと見なし、まったく相手にしてこなかった。日本で出回っているロシア情報も欧米経由で入ってきたものばかりなので、必然的にプーチン批判一色となっていた。 特に日本にはロシア専門家と見られている人も含め、ロシア語を十分に解する人が少ないので、偏りが生じてしまっていた。
「領土よりも安全保障」
このたび、私は編集者として元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏のインタビューをまとめ、『現代の「戦争と平和」 ロシアvs.西側世界』を刊行した。パノフ氏は駐日ロシア大使として日ロ関係の発展に尽力し、北方領土問題の解決に取り組んできた。ロシア随一の知日派と言っていい。インタビュアーを務めたのは、パノフ氏のカウンターパートで、北方領土交渉をリードしてきた元外務省欧州局長の東郷和彦氏である。 パノフ氏は戦争が始まった直後から停戦を主張しており、プーチン政権と必ずしも意見が一致しているわけではない。しかし、長年ロシア外交官として活躍してきた経験から、プーチン大統領の思考を正確に理解している。 日本の一部では、プーチン大統領はウクライナ全体を支配するという野心を持っているので、停戦を呼びかけても応じるわけがない、といった意見が聞かれる。しかし、パノフ氏はプーチン政権が求めているのは領土ではなくロシアの安全保障だと述べている。 《プーチン大統領は特別軍事作戦終了の条件を何度も説明しています。要約すれば以下の通りです。 ロシアにとって何よりも重要なのは安全保障です。いかなる形であれウクライナが安全保障上の脅威になることは許されません。ウクライナはNATOに加盟すべきではないし、憲法に中立国の地位を明記すべきです。 もちろん、このことに国際的な保証を与えることは否定しません。さらに、ウクライナ領内に非武装地帯を設け、そこからロシア領土に銃やミサイルで攻撃できないようにすべきです。クリミアだけでなく、ドネツクやルガンスク、ザポロジエ、へルソンの各州が、住民投票でロシアの一部になったことも考慮する必要があります。 プーチン大統領は「特別軍事作戦は領土紛争ではない。問題は領土ではない。これは安全保障の問題であり、領土よりもはるかに重要だ」と繰り返し強調しています。》 言い換えれば、安全保障さえ確保できれば、領土に関してロシアが譲歩する可能性もあるということだ。
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